
訪問予定の作成や急な変更の調整、ご利用者様情報の申し送り、訪問後の記録づくり。日々の業務に追われ、営業やスタッフ育成といった本来注力すべき仕事に手が回らない、そんな状況にお悩みの訪問看護ステーションの管理者様も多いのではないでしょうか。
深刻化する人手不足を背景に、訪問看護の現場でもICT(情報通信技術)の活用による業務効率化が進んでいます。2026年度(令和8年度)の診療報酬改定ではICTを用いた情報連携を評価する加算も新設され、ICT化は経営面でも重要なテーマになりました。
本記事では、限られた人員でケアの質と働きやすさをどう両立させるかという、訪問看護ステーション運営の視点に立ち、自事業所に合うICT化をどこから進めるべきかを順に解説します。
訪問看護のICT化は、単なる記録の電子化ではなく、限られた人員で質の高いケアを提供し続けるための経営課題になっています。ここでは、ICTの基本的な意味と、訪問看護の現場でデジタル化が進む背景、導入で期待できる効果を解説します。
ICT(情報通信技術)とは、通信ネットワークを介した情報のやり取りや共有に重点を置いた技術の総称です。ITが技術そのものを指す言葉であるのに対し、ICTはチャットやクラウドサービスのように人と人、人とモノをつなぐ活用に着目した言葉として使われます。
また、IoT(モノのインターネット)は、センサーや機器などのモノがインターネットにつながる仕組みを指します。訪問看護の文脈では、電子カルテやスケジュール管理ツールなど、情報を記録し関係者間で共有する仕組み全般をICTと捉えて差し支えありません。
訪問看護の需要は高齢化とともに増え続けている一方、担い手となる看護師の確保は年々難しくなっています。限られた人員で訪問件数を維持・拡大するには、記録や調整といった間接業務の時間を圧縮し、ケアに充てる時間を確保する仕組みづくりが欠かせません。
制度面でも、レセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求への移行や、診療報酬改定でのICT活用の評価新設など、デジタル化を前提とする流れが強まっています。人手不足の現状と対応策については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:看護師の人手不足への対応策 ~原因や課題、現場へ影響までを徹底解説~
移動や記録にかかる時間が減ることで、まずはご利用者様を訪問できる時間を増やすことが期待できます。出先で記録の作成や情報の確認ができれば、事業所に戻ってからの事務作業も減り、残業時間の削減につながりやすくなります。
こうして生み出された時間は、職員の育成や研修に充てられます。業務改善に取り組む職場であること自体も、採用活動での訴求材料になり、訪問実績などのデータが蓄積されることで、経営状況の見える化にも役立ちます。
業務改善の進め方の全体像は、以下の記事で解説しています。
関連記事:看護業務改善の完全ガイド| 人手不足を解消しケアの質を高めるステップ

中でもICT化の効果が大きい業務のひとつが、スケジュール管理です。ここでは、スケジュール管理が事業所経営に直結する理由と、多くの管理者様が抱える課題を解説します。
訪問看護において、訪問件数は事業所の売上に直結します。そして訪問件数を増やすためには、無駄のない訪問スケジュールを作成し、効率的に訪問を行うことが重要になります。
効率的に訪問できているかを把握する指標のひとつが、「稼働率」です。ただし稼働率には公的な定義や基準値がなく、算出方法も事業所によって異なります。一般には、勤務時間に占めるサービス提供時間の割合として扱われます。
稼働率=1か月の総訪問時間数÷1か月の総勤務時間数
他の事業所と比べるのではなく、自事業所の推移を追うことが重要です。想定より低い状態が続く場合は、訪問と訪問の間の移動時間を無駄に多く確保しすぎていないか、移動時間が短くなるような効率の良いルートになっているか、特定の曜日や時間帯に偏りが発生していないかなど、俯瞰して見直しをしてみましょう。
訪問スケジュールの作成には、ご利用者様の希望時間、スタッフのシフト、相性、資格、業務負担、移動ルートなど考慮すべき条件が多岐にわたり、作成・調整そのものが管理者様の負担になりやすい業務です。さらに、前日や当日の容体変化やスタッフの急な休みによる変更が頻発し、そのたびに前後の訪問との移動時間を考慮した調整が必要になります。
変更が生じた際にタイムリーな情報共有ができていないと、変更前の予定で動いてしまい、訪問の抜け漏れや重複が発生するおそれもあります。訪問の抜け漏れはご利用者様との信頼関係に直結するため、起こりにくい仕組みづくりが重要です。
また、Excel(エクセル)やホワイトボードでの管理には、同時編集や外出先からの確認が難しく、変更が全員に伝わるまでに時間差が生まれるという限界があります。予定の複雑さが増すほど、手作業での管理は負担とリスクが大きくなります。
なお、訪問介護の事業所におけるスケジュール管理の考え方は、訪問介護のスケジュール管理 ~デジタルツールの活用でスケジュールの悩みを解決~で解説しています。

訪問スケジュール管理は、訪問看護ステーションの売上に直結するだけでなく、スタッフの満足度や訪問看護ステーションとしての信頼構築にも関係します。そのため、管理者様の業務の中でも非常に重要なものの1つです。そこで、より良い訪問スケジュール管理のポイントをご紹介します。
訪問看護では、訪問と訪問の間に必ず移動時間が発生します。移動そのものは直接的な収益を生まないため、移動ルートの効率化によって生まれた時間を、訪問件数の上積みや、記録・カンファレンスなどに充てることができます。
地域や事業所、スタッフによって移動手段が様々なので、それぞれの移動手段に合わせて最適なルートを選択することで、無駄な時間を削減し、移動によるスタッフの負担を軽減することも可能になります。
訪問看護では、病棟よりも1人で判断しなければならない状況が多く発生します。そのため、スタッフのスキルを鑑みて、ご利用者様ごとに最適なスタッフを配置しましょう。
また、ご利用者様の居宅に30分から1時間滞在し、1人で対応する訪問看護では、スタッフとご利用者様の相性にも配慮する必要があります。ご利用者様とスタッフが負担を感じないためにも相性まで考慮してスケジュール管理を行いましょう。
スタッフが働きやすい職場づくりの一環として希望休を可能な範囲で叶えることが重要です。ただし、全ての希望を叶えることは難しいことが多いので、希望する休暇・勤務日等の上限を定めることで特定の職員に負担が偏ってしまうことを防ぐことができます。オンコール当番の回数等も同じように配慮が必要です。
また、子育て世代のスタッフは時短勤務や中抜けが行えることで、プライベートとの両立ができるため、無理なく働くことができ、離職を防ぐことが可能になります。
ご利用者様の容態が変わって新たな訪問が発生したり、スタッフの急な休みで訪問できなくなったりするような緊急の事態に備え、事前にフォロー体制を構築しておきましょう。例えば、担当エリアをチームでカバーする体制を作る、休んだスタッフがいた場合の代理スタッフを決めておくなどの方法がお勧めです。
また、管理者様など1名は訪問予定を控えめにし、訪問に行っているスタッフからの急な相談やヘルプに対応できるようにすることで、1人で訪問に行くスタッフが安心できる体制も整えられるようになります。
ここでは、訪問看護のICT化に活用できる主なツール・アプリを役割別に解説します。スケジュール管理とあわせて導入することで、記録から請求、情報共有までの一連の業務を効率化しやすくなります。
訪問看護で活用されている代表的なICTツールは、次のとおりです。
ツール種別 | 主な機能 | 効率化できる業務 |
電子カルテ | 看護記録の作成・管理、音声入力 | 記録業務、請求連携 |
レセプト・請求ソフト | 請求データ作成、オンライン請求 | 請求業務、返戻対応 |
スケジュール管理ツール | 訪問予定の作成・共有、ルート計算 | 予定の調整、移動の効率化 |
勤怠管理システム | スマートフォン打刻、位置情報の記録 | 勤怠集計、直行直帰 |
情報共有・チャットツール | メッセージ・書類・画像の共有 | 申し送り、連絡業務 |
このうち電子カルテは、タブレットなどから訪問先や移動の合間に看護記録を作成でき、事業所に戻ってからの記録業務を減らせます。選択式入力や音声入力に対応したものもあり、請求機能と一体型のタイプなら請求業務の効率化も見込めます。記録そのものの書き方や効率化のコツは、以下の記事で解説しています。
関連記事:看護記録の書き方完全ガイド:記録の基本から効率化まで
このほか、オンラインでのサービス担当者会議に使えるビデオチャットツールや、名刺管理アプリなども活用されています。自事業所の課題がどの業務にあるかを踏まえ、優先順位をつけて導入を検討しましょう。
タブレットやスマートフォンは、訪問看護のICT化の入口となる機器です。出先でのご利用者様情報や訪問予定の確認、訪問先での記録作成、紙資料を持ち歩かないことによる荷物の削減、創部などの状態を写真で共有するといった使い方が代表的です。
事業所に戻らず直行直帰する働き方の基盤にもなります。端末を選定する際は、OSのアップデートに長く対応できる機種か、購入とレンタルのどちらの契約形態が自事業所に合うか、利用したい電子カルテやアプリが対応しているかを確認しましょう。
タブレット等の業務利用では、ご利用者様の個人情報を扱うため、セキュリティ対策が不可欠です。運用ルールとして、最低限次の点を整備しておきましょう。
・ 置き忘れ・盗難への対策(画面ロック、遠隔でのデータ消去設定など)
・ 端末の持ち帰りや私的利用に関するルールの明確化
・ OS・アプリを最新の状態に保つ運用
・ ウイルス対策ソフトの導入
・ データ通信量の上限管理
こうしたルールを導入時に定めておくことで、スタッフが安心して端末を活用できる環境が整います。
1つ目は、効率化したい業務の特定です。最初からすべてを電子化しようとせず、時間を取られている業務(スケジュール作成、記録、請求など)を洗い出し、効果の大きい領域から着手します。
2つ目は、既存システムとの連携可否です。すでに電子カルテや請求システムを使っている場合は、新たに導入するツールと連携できるかを確認します。連携できず二重入力が発生すると、かえって現場の負担が増えるためです。
3つ目は、現場の使いやすさとサポート体制です。実際に使うのは現場のスタッフであるため、無料トライアルやデモで操作感を確かめ、導入時の設定支援や問い合わせ対応の体制も確認しましょう。
訪問スケジュール・訪問ルートを自動で作成する『ZEST SCHEDULE』は、ご利用者様の希望時間や職員の勤務シフト、スタッフのスキル、移動効率といった訪問特有の条件を考慮したスケジュールを自動で作成します。電子カルテなど既存システムとの連携可否や操作感は、無料トライアルや個別のオンライン説明会で確かめられます。

ICT導入には初期費用や月額費用がかかりますが、負担を軽減できる公的な支援制度があります。ここでは、代表的な補助金と、令和8年度診療報酬改定で新設された加算をご紹介します。制度の内容は年度ごとに見直されるため、申請前に必ず最新の要領をご確認ください。
制度名 | 対象 | 支援内容 | 確認先 |
介護テクノロジー導入支援事業 | 介護サービス事業所※ | ICT機器・記録ソフト等の導入費用を補助 | 各都道府県の担当窓口 |
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 中小企業・小規模事業者 | ITツール導入費用の一部を補助 | 公式サイト |
※対象範囲・補助率・上限額は、都道府県の実施要領および各年度の公募要領によります。
介護テクノロジー導入支援事業は、地域医療介護総合確保基金を財源として都道府県が実施する補助制度で、ICT機器や記録ソフト等の導入費用が補助対象に含まれます。ただし、対象となる事業種別や補助率・上限額は都道府県ごとに異なるため、訪問看護ステーションが対象に含まれるかも含めて、開設地の都道府県の実施要領を必ず確認してください。
また、2026年度(令和8年度)からは、従来の「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」に名称を変えて実施されています。中小企業・小規模事業者を対象に、ITツールの導入費用の一部が補助される制度です。
出典:厚生労働省「介護分野の生産性向上~お知らせ~」/デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト
なお、医療保険の訪問看護では、2024年(令和6年)7月請求分からレセプトのオンライン請求が始まり、同年12月2日からは原則義務化されています(届出による経過措置あり)。請求業務のデジタル化は既に運営の前提となりつつあります。請求業務の流れとオンライン化への対応は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:訪問看護のレセプト業務の完全ガイド:複雑な請求ルールと最新のオンライン化に対応する
2026年(令和8年)6月施行の令和8年度診療報酬改定では、医療保険の訪問看護に「訪問看護医療情報連携加算」が新設されました。関係職種がICTを用いて記録したご利用者様の診療情報等を活用し、訪問看護の計画的な管理を行った場合を評価する加算で、月1回1,000円を所定額に加算します。
加算の概要は次のとおりです。
加算額 | 月1回1,000円(所定額に加算) |
対象のご利用者様 | 訪問看護管理療養費を算定する通院困難な方 |
算定できる職種 | 看護師等(准看護師を除く) |
併算定できない加算 | 在宅患者連携指導加算/在宅医療情報連携加算 |
主な施設基準 | ICTによる常時確認体制、連携機関5か所以上等※ |
届出先 | 地方厚生(支)局長等 |
※施設基準には、院内掲示およびウェブサイトへの掲載も含まれます。詳細は厚生労働省の告示・通知でご確認ください。
算定できる職種や併算定の制限が細かく定められているため、体制を整える前に、自事業所が要件を満たせるかを確認しておく必要があります。とくに、ICTで共有した情報を訪問看護の計画的な管理に反映するという運用が求められる点は、ツールを導入するだけでは満たせません。
施設基準を満たしたうえでの届出が必要であり、加算を取得できるかは事業所の体制や要件の充足状況によります。従来から、退院時共同指導やカンファレンスの一部でICTを用いた参加が認められるなど、訪問看護とICTの接点は広がっており、連携体制の整備が報酬面でも評価される流れは今後も続くと考えられます。
なお、施設基準のうちウェブサイトへの掲載については、2026年(令和8年)9月30日までの経過措置が設けられています。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(令和8年厚生労働省告示第74号・第75号、令和8年3月5日保発0305第19号)
ここでは、スケジュール管理のICT化に取り組み、作成時間を75%削減した訪問看護ステーションの事例をご紹介します。
公益社団法人 静岡県看護協会様では、県内4か所で運営する訪問看護ステーションにおいて、スケジュール作成に時間がかかることに加え、訪問の抜け漏れが課題となっていました。そこで、当社の訪問スケジュール・訪問ルートの自動作成クラウド『ZEST』を導入し、条件を考慮したスケジュールの自動作成に切り替えました。
その結果、スケジュール作成の時間が75%削減され、課題であった訪問の抜け漏れも改善しています。詳細は公益社団法人 静岡県看護協会様の導入事例でご覧いただけます。

訪問看護のICT化は、記録や請求といった個別業務の効率化にとどまらず、限られた人員でケアの質と働きやすさを両立させるための経営基盤づくりです。まずは稼働率などの数値で現状を把握し、時間を取られている業務から優先的にツールの導入を検討しましょう。補助金や加算といった制度の後押しも活用できます。
中でもスケジュール管理は、売上・スタッフの負担・ご利用者様との信頼関係のすべてに関わる、ICT化の効果が表れやすい領域です。『ZEST SCHEDULE』は、ご利用者様の希望時間や職員の勤務シフト、移動効率といった訪問特有の複雑な条件を考慮したスケジュールを自動で作成し、管理者様の作成・調整にかかる負担の軽減を支援します。
あわせて、現場スタッフ向けモバイルアプリ『ZEST HUB』では、スマートフォンから訪問予定や移動時間、空き時間を一目で確認でき、直行直帰を含めた生産性の高い働き方を支えます。ご利用者様の情報や申し送りのメモも確認でき、電子カルテなど関連ツールへスムーズに遷移できるため、外出先でも記録・参照を進めやすくなります。
なお、『ZEST』はデジタル化・AI導入補助金2026の対象ツールです。ZESTでは、無料オンライン説明会を平日毎日開催しております。実際に導入して業務効率化に取り組む事業所の事例もご紹介しておりますので、ご興味がございましたらぜひお申込みください。
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