
看護現場では、深刻な人手不足と多忙な業務により、患者さんと向き合う時間が不足しているという切実な悩みがあります。本コラムでは、日本看護協会の指針に基づき、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を省き、専門性を最大限に発揮するための具体的なステップや成功事例を解説します。業務改善の目的は単なる時間短縮ではなく、看護の質の向上と、看護職が健康に働き続けられる環境を両立させることにあります。

日本の医療・介護を取り巻く環境は激変しています。2040年に向けて、高齢化によるニーズの増大と、少子化による労働力不足が同時に進行しており、限られた人員で質の高い看護を提供し続けることが喫緊の課題となっているためです。また、看護職自身の働き方改革を推進し、専門性をより発揮できる体制を整える必要性が高まっています。
深刻化する人手不足に対応するためには、業務改善による負担軽減が急務です。看護職の有効求人倍率は2.2倍と高く、過酷な環境は離職を招き、さらなる負担増という負のループを生みます。また、2024年4月から医師の時間外労働上限規制が適用されたことで、医師から看護師への役割移譲(タスク・シフト)が進む可能性もあります。業務改善の真の目的は、非効率な方法を見直して生み出した時間を「看護の質の向上」や「専門性の発揮」に充て、持続可能な看護提供体制を構築することにあります。
出典:公益社団法人日本看護協会(看護業務効率化取り組みガイド)
多くの看護師が、本来のケアとは無関係な業務に時間を奪われていると感じています。長年続いてきた慣習や、アナログな作業手順が、知らず知らずのうちに現場の負担を増大させているケースは少なくありません。まずは「当たり前」だと思っている業務の中に、改善の余地が隠れていないかを見極めることが重要です。
前残業での過度な情報収集や、目的が不明確な定例会議は、代表的な非効率業務です。また、個々のスキルに合わない強制参加の研修や、先輩が帰るまで帰りづらいといった心理的圧力による待機時間も、ワークライフバランスを阻害する要因となります。アナログ作業の限界としては、重複する帳票作成、電話による頻繁な情報確認、物品を探す手間などが挙げられます。これらを見直すことで、看護師が本来注力すべき、患者さんへのアセスメントやケアの時間を確保できるようになります。

業務改善を成功させるには、思いつきではなく計画的なステップが不可欠です。日本看護協会はPDCAサイクルに沿ったプロセスを推奨しており、現状を正しく把握し、現場の納得感を得ながら進めることで、持続的な改善が可能になります。ここでは、失敗しないための具体的な5つのステップを詳しく解説します。
出典:公益社団法人日本看護協会(看護業務効率化取り組みガイド)
第一段階は現状を正確に把握することです。プロセスマップやタイムスタディを用いて、誰が何の業務にどれだけ時間を費やしているかを可視化します。また、スタッフへのヒアリングやアンケートを行い、現場が抱える具体的な悩みや行き詰まっている箇所を抽出することも重要です。主観的な意見と客観的な数値を組み合わせることで、実態に即した有効な対策を検討する土台が整います。
現状把握の次は課題の抽出です。業務プロセスに、資源不足による「ムリ」、重複作業などの「ムダ」、担当者による成果のバラつきである「ムラ」がないか分析します。課題が複数ある場合は、重要度や緊急度に基づいて優先順位をつけます。すべての問題に一度に手を付けるのではなく、改善効果が高いものから順次着手することが成功の秘訣です。分析結果をスタッフ間で共有し、解決すべき問題を明確に定義しましょう。
課題に対し、「いつ・誰が・どのように」達成するか具体案を練ります。業務の「廃止・削減」、手順の「標準化(マニュアル化)」、ICTの「活用」、他職種への「タスク・シフト/シェア」などの対策を検討します。プロジェクトチームの設置や経費の確保、組織内の合意形成もこの段階で進めます。倫理面や安全面に配慮しつつ、現場にとって現実的で達成可能な目標数値を設定することが計画立案のポイントです。
計画に基づき改善活動を実際にスタートさせます。全組織で一斉に始めず、まずは1つの部署から試行する「スモールスタート」も、リスクを抑えつつ範囲を広げていくための有効な方法です。実施中は定期的な報告や会議を通じて進捗を確認し、チーム内で情報を共有しましょう。思うような結果が出ない場合でも、その過程を記録しておくことが後の評価やさらなる改善に繋がります。変化への不安を払拭する丁寧な説明も欠かせません。
最後は評価と見直しです。残業削減時間や業務時間の短縮といった数値を用い、目標達成度を客観的に判定します。目標が達成できなかった場合はその原因を分析し、改善案を修正して再度PDCAサイクルを回します。成果が出た際も一時的な活動に終わらせず、定期的な見直しを行うことで改善を定着させ、さらなる発展を目指します。評価結果を組織全体で共有し、スタッフのモチベーション維持に繋げましょう。

実際に成果を上げた事例を知ることは、自施設での取り組みの大きなヒントになります。多くの医療機関が、身近な工夫から最新のICT導入、多職種連携に至るまで、多様なアプローチで成果を出しています。ここでは、業務の標準化、デジタル活用、役割分担の見直しという3つの切り口から、代表的な成功事例を紹介します。
業務効率化・標準化の具体的な事例として、熊本地域医療センターでは「ユニフォーム2色制」を導入しました。日勤と夜勤で色を変えることで勤務交代を可視化し、時間外の医師からの指示回数を減らすなどの工夫により、1年で平均約1時間の残業削減を達成しています。
また、県立広島病院では看護記録のテンプレート化を実施しました。記録項目を標準化したことで、リアルタイム入力が促進され、33.7時間あった時間外勤務が9.6時間まで大幅に減少しました。さらに、入退院オリエンテーションを動画化した事例では、説明の質を均一に保ちながら説明時間を短縮し、看護師の負担軽減に成功しています。
出典:公益財団法人日本看護協会(「ユニフォーム2色制」と「ポリバレントナース育成」による 持続可能な残業削減への取り組み)
(看護記録に要する時間削減の効率化への取り組み―記録内容の標準化とリアルタイム記録に焦点を当てて)
ICTの活用は、看護師の移動時間削減やケア時間の確保に直結します。例えば、スマホ連動ナースコールの導入により、どこにいても着信を受け、カメラで状況確認が可能になるため、迅速な対応が可能となり、移動の無駄を省くことができます。
また、ある訪問看護ステーションでは独自アプリやSNSを活用し、スムーズな直行直帰を実現しました。結果として時間外労働が約3分の1に減少し、スタッフの意欲向上にも繋がっています。デジタルの力で情報のズレをなくし、リアルタイムで共有することが効率化の要です。
看護師の専門性を要しない業務を他職種へ移譲することで、本来のケアに専念できる環境が整います。
HITO病院では薬剤管理業務を病棟薬剤師へ移管し、看護師の薬剤管理時間を半分以上削減するとともに、インシデントの減少も実現しました。また、潤和会記念病院ではベッドメイキングを外部委託することで、月の時間外労働を前年比約100時間も減少させています。「看護師にしかできないこと」に注力するため、他職種との役割分担を明確にすることが、組織全体の生産性を高めます。
出典:公益財団法人日本看護協会(病棟薬剤師との役割委譲・協働による病棟薬剤管理業務の見直し)

業務改善は、単に「仕事を楽にする」だけのものではありません。取り組みを進める上では、看護の質を守り、チームの結束を高めるための視点が不可欠です。現場のスタッフが前向きに参加し、組織全体でゴールを共有できる環境を整えることが、改善活動を形骸化させないための鍵となります。
最も重要なのは「看護の専門性」と「医療安全」の視点を維持することです。効率化を優先しすぎてケアの質が低下したり、倫理的な問題が生じたりしないよう、常に目的を意識する必要があります。また、現場が安心して意見を言える心理的安全性を確保し、管理者とスタッフが同じゴールを目指す組織風土づくりも欠かせません。改善によって「働きがい」が向上し、生み出された時間が患者さんへの手厚いケアに還元されるという好循環を目指しましょう。

看護現場の業務改善において最大の壁となるのは、現場の実態を正確に把握し、継続的な改善サイクルを回し続ける労力です。日本看護協会が推奨するPDCAサイクルを、アナログな手法だけで運用するのは限界があります。『ZEST』は、データ活用によって看護現場の「ムリ・ムダ・ムラ」を自動で抽出し、看護師が本来の専門業務である「患者さんへのケア」に集中できる環境づくりを強力にサポートするITツールです。

業務改善の第一歩は現状の可視化ですが、スタッフの動線を長時間計測するタイムスタディは現場の大きな負担となります。「ZEST SCHEDULE」は、日々の訪問や業務スケジュールを最適化すると同時に、誰が・どの業務に・どれだけの時間を費やしているかを自動でデータ化します。これにより、個人の経験に頼っていた「ムラ」や、移動効率の悪さによる「ムダ」を客観的な数値として即座に抽出できます。現場への負荷をかけることなく、改善が必要なポイントを明確に定義することが可能になります。

抽出された課題を解決するための具体的な対策として、「ZEST HUB」が機能します。移動時間や空き時間をリアルタイムで可視化することで、移動距離を最小限に抑えた「直行直帰」の標準化や、事務作業をスキマ時間に充てる効率的なワークフローを容易に構築できます。また、情報の共有がスムーズになることで、電話による頻繁な確認といったアナログな手間を削減し、スタッフ間の情報のズレを解消します。これにより、改善計画に基づいた「新しい働き方」を現場に無理なく定着させることができます。

改善活動の効果を客観的に判定し、次なるアクションへ繋げるのが「ZEST BOARD」の役割です。改善前後の時間外労働の推移や訪問件数、スタッフごとの業務負荷指数などを自動で集計・グラフ化します。目標達成度を数値で確認できるため、スタッフのモチベーション維持に欠かせない「成果の共有」が容易になります。また、生み出された時間が適切にケアの質向上に還元されているかを分析することで、一過性の活動に終わらせない、持続可能な改善サイクルを実現します。
『ZEST』は、PDCAサイクルという看護業務改善のプロセスをテクノロジーで自動化・効率化し、人手不足に負けない「持続可能な看護提供体制」の構築に貢献します。
看護業務の改善は、人手不足という大きな壁を乗り越え、質の高い看護を提供し続けるための「未来への投資」です。PDCAサイクルを回し、小さな成功体験を積み重ねることが、スタッフのモチベーション向上と職場定着に繋がります。本コラムの内容を参考に、まずは身近な一歩から、より良い看護現場への変革を始めてみてはいかがでしょうか。
ZESTでは、毎日無料オンライン説明会を行っておりますので、ご興味がございましたら是非お申込みください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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