訪問看護の仕事内容は、ご利用者様の自宅で行う病状の観察や医療処置、療養上の世話といったケアと、計画書・記録の作成や主治医との連携、訪問予定の調整といった訪問以外の業務に大きく分かれます。
こうした訪問以外の業務の負担は、外からは見えにくい面があります。新人職員への業務説明や採用面接での仕事紹介、職員ごとの訪問の割り振りの場面で、どこまで説明すればよいか迷う訪問看護ステーションの経営者・管理者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、訪問看護の仕事を「訪問時に行う仕事」と「訪問以外に発生する業務」に分けて解説します。業務の全体像を共有できれば、新人への説明や、誰が何を担うかを見直すときの土台になります。

訪問看護は、看護師などがご利用者様の自宅を訪問し、主治医の指示のもとで療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。ここでは、仕事内容の前提となる定義と役割、対象者と保険、担い手の職種を解説します。
介護保険法第8条第4項では、訪問看護を、主治医が必要と認めた居宅要介護者に対し、その居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話または必要な診療の補助と定めています(要支援者は介護予防訪問看護)。
制度上の位置づけは保険によって異なり、医療保険では、訪問看護ステーションが行う訪問看護が健康保険法上の「指定訪問看護」にあたります。いずれの制度でも主治医の指示に基づく点は共通です。
訪問看護の主な提供主体は、訪問看護を専門に提供する訪問看護ステーションと、病院・診療所です。
訪問看護師には、在宅で療養するご利用者様の状態を医療の視点で見守り、生活と医療をつなぐ役割があります。主治医や介護支援専門員、訪問介護員など多くの職種が関わる在宅療養の中で、医療的な観察と判断を担い、得た情報を関係者に伝える立場です。
訪問看護は、主治医が必要と認めた方が利用できます。介護保険の被保険者は40歳以上の方で(介護保険法第9条)、40〜64歳の方は特定疾病が原因の場合に要介護・要支援の認定を受けられます。
要介護・要支援の認定を受けている方は原則として介護保険が優先され、40歳未満の方や認定を受けていない方は、医療保険の適用要件を満たす場合に医療保険の対象となります。
ただし、次のような方は、要介護・要支援の認定を受けていても医療保険の対象です。
・厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍など)に該当する方
・急性増悪などで特別訪問看護指示書が交付されている期間中(最長14日間)の方
・精神科訪問看護基本療養費の対象となる方
訪問看護ステーションが訪問看護を行うには、保険の種類を問わず主治医が交付する有効期間内の訪問看護指示書(精神科訪問看護の場合は精神科訪問看護指示書)が必要です。
訪問回数などのルールも保険によって異なり、医療保険では原則として週3日までですが、厚生労働大臣が定める疾病等の方や特別訪問看護指示書の交付期間中などは、週4日以上の訪問が認められる場合があります。
保険の適用関係や回数・時間のルールは、訪問看護における医療保険適用の条件:介護保険との違いと優先順位を徹底解説にまとめています。
参考:日本訪問看護財団「訪問看護とは(医療・福祉関係者向け)」
参考:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」
介護保険で訪問看護を行えるのは、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です(介護保険法第8条第4項、同法施行規則第7条)。医療保険の訪問看護では、これに助産師が加わります(健康保険法施行規則第68条)。法令上は、これらの職種をまとめて「看護師等」と呼びます。
訪問看護ステーションの理学療法士などによる訪問は、介護報酬の通知(老企第36号)で、看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心とするものと位置づけられています。どの職種を何人配置するかで、提供できるサービスの幅が変わります。
参考:e-Gov法令検索「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」

訪問先での仕事は、主治医の指示と訪問看護計画書に基づき、ご利用者様の状態に合わせて複数のケアを組み合わせて行います。
主な仕事内容を区分ごとにまとめると、次のとおりです。
区分 | 主な内容 |
|---|---|
病状の観察 | バイタルサインの測定、症状・服薬状況の確認 |
医療処置 | 褥瘡処置、点滴・カテーテルの管理 |
療養上の世話 | 清拭・入浴介助、排泄・食事の援助 |
リハビリテーション | 関節の運動、起居・歩行の練習 |
ご家族への支援 | 介護方法の助言、相談対応 |
ターミナルケア | 症状の観察、看取りに向けた支援 |
訪問時には体温・血圧・脈拍などのバイタルサインを測定し、症状や食事・睡眠・排泄、服薬の状況を確認します。主治医から指示された観察項目のほか、住環境や生活リズムの変化にも目を配ります。
訪問できる時間は限られているため、前回の記録と比べて小さな変化に気づくことが重要です。異変の兆候があれば主治医に報告し、指示を受けて対応します。
主治医の指示に基づき、褥瘡(床ずれ)の処置、点滴・注射、膀胱留置カテーテルや経管栄養の管理などを行います。在宅酸素療法や人工呼吸器を使う場合は、機器の作動状況も確認します。
医療依存度の高いご利用者様を受け入れる際は、必要な処置に対応できる職員の経験や配置など、事業所の体制を確認する必要があります。
処置を行うだけでなく、医療機器の扱い方や異常時の連絡方法をご本人やご家族に説明することも仕事の一部です。
訪問看護計画書に基づき、清拭や入浴の介助、排泄や食事の援助といった療養上の世話を行います。訪問介護と似た場面もありますが、訪問看護では主治医の指示や病状を踏まえて行います。
リハビリテーションは、理学療法士などのリハビリ職や看護師が担当します。起き上がりや歩行などの動作練習を通じて、自宅での生活動作の維持や向上を目指します。
介護を担うご家族に介護方法や体調変化への対応を助言します。介護の不安や悩みを聞き、必要に応じて介護支援専門員などと連携し、利用できる支援につなげるなど、ご家族を含めて支える視点が求められます。
人生の最終段階を自宅で過ごすことを望むご利用者様に対しては、主治医の指示に基づき、痛みや息苦しさなどの症状を観察し、苦痛の緩和に向けたケアを行います。
状態の変化に応じて主治医と密に連携します。夜間の対応体制は、後述の「オンコール・緊急時の対応」で解説します。ご家族に対しては、今後予想される経過を事前に説明し、看取りへの心の準備を支えます。
訪問看護では、訪問先でのケアのほかに、書類作成・記録・連携・調整といった業務が日々発生します。
訪問以外に発生する主な業務と担い手は、次のとおりです。
業務 | 主な担い手 | 発生のタイミング |
|---|---|---|
訪問看護計画書の作成 | 看護師等(准看護師を除く) | 訪問開始時・見直し時 |
訪問看護報告書の作成 | 看護師等(准看護師を除く) | 定期的(主治医へ提出) |
訪問看護記録書の作成 | 訪問を担当した職員など | 初回訪問時・訪問ごと |
主治医・介護支援専門員との連携 | 看護職員・管理者 | 状態変化時・会議時 |
請求・書類管理 | 事務職員 | 月初・随時 |
訪問スケジュールの作成・調整 | 管理者・スケジュール担当 | 定期・変更時 |
※担い手は事業所の体制により異なります。
訪問看護計画書は、これから行う看護の計画です。主治医の指示やご利用者様の希望、心身の状況を踏まえ、療養上の目標と具体的なケア内容を記載します。介護保険では、介護支援専門員が作成するサービス全体の計画であるケアプランに沿って作成します。
計画書は、主要な事項をご利用者様やご家族に説明し、介護保険ではご利用者様の同意を得て交付します。
一方、訪問看護報告書は、実際に行った看護の報告で、訪問日や提供した看護の内容を記載します。計画書・報告書ともに、いずれの保険でも主治医への提出が必要です。
計画書・報告書の作成には、看護職員(准看護師を除く)が関わります。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問看護を提供している場合は、看護職員とこれらのリハビリ職が連携して作成します。主治医に提出する書類には、リハビリ職が提供した訪問看護の内容も一体的に記載します。
管理者は、計画書・報告書の作成について必要な指導・管理を行います。作成や主治医への提出については、介護保険・医療保険それぞれの運営基準で定められています。
参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
関連記事:訪問看護計画書と報告書の書き方|作成時の留意点も確認しよう
訪問看護記録書は、主治医に提出する報告書とは別に、ご利用者様ごとの経過を事業所で記録・保管する書類です。厚生労働省の通知(老企第55号)では、記録書を次の2種類に分けて整備するよう示しています。
・初回訪問時などに、傷病名・既往歴や療養・介護の状況、緊急連絡先などを記載する記録書Ⅰ
・訪問のたびに、病状や実施したケアを記載する記録書Ⅱ
令和8年度(2026年度)診療報酬改定後の留意事項通知では、医療保険の訪問看護について、看護内容の評価を記録書に記載することや、訪問時間を実際の開始・終了時刻で記録することが示されています。記録は請求の根拠にもなるため、正確さが求められます。
担当者が変わる日やオンコール対応に備え、職員間の申し送りも欠かせません。誰が訪問しても同じ情報でケアできるよう、共有の手段とルールを決めておきます。
ご利用者様の状態に変化があったときは主治医に報告し、指示の内容を確認します。介護保険では、介護支援専門員との調整も日常的に発生します。
このほか、介護支援専門員がケアプランを検討するために開くサービス担当者会議や、入院中のご利用者様の退院後の療養について話し合う退院前カンファレンスへの参加も、訪問以外に発生する業務のひとつです。
事務職員を置いて、看護職員の事務作業を分担する事業所もあります。事務職員に任せやすい業務には、次のようなものがあります。
・介護給付費や訪問看護療養費の請求
・書類の整理・保管
・電話の一次受付
・物品の管理
一方で、看護判断を伴う業務や、計画書・報告書の内容の作成は、事務職員には任せられません。事務職員の有無や任せる範囲は事業所によって異なります。任せる業務の線引きを明確にしておくと、看護職員が訪問や看護業務に時間を充てやすくなります。
訪問スケジュールの作成では、多くの条件を同時に考慮しなければなりません。主な条件は次のとおりです。
・ご利用者様の希望時間
・担当者の固定の有無
・職員の資格や勤務時間
・訪問エリアの広さと移動手段
・1回の訪問にかかる時間
1日に訪問できる件数は、職員の経験に加え、こうした条件の組み合わせにも左右されます。さらに、臨時の訪問や職員の急な休みなどで、予定は日々変わります。
作成と変更の調整を管理者が一手に担っている場合は、負担が集中しやすくなります。担当の組み合わせに柔軟性を持たせておくと、担当者の休みや急な変更にも対応しやすく、移動も効率化しやすくなります。同じ人員でも、スケジュールの組み方を工夫すると、訪問件数と職員の負担のバランスを整えやすくなります。
関連記事:訪問看護のスケジュール管理アプリ|ICT活用・補助金も解説
訪問件数を安定して確保するには、ご利用者様の希望時間と移動を両立させるスケジュール作成が重要です。訪問スケジュール・訪問ルートの自動作成クラウド『ZEST』では、こうしたスケジュール作成の効率化を含めた機能と導入効果を、資料にまとめて無料で配布しています。
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訪問看護師の1日は事業所の規模や訪問エリアによって異なりますが、たとえば朝の情報共有、訪問、記録と連携の順に進みます。
日勤の看護師1人の1日を一例として示すと、次のとおりです。
時間帯 | 主な業務 |
|---|---|
8:30 | 出勤、申し送り・当日の予定確認 |
9:00 | 1件目の訪問 |
10:30 | 2件目の訪問 |
12:00 | 午前分の記録の入力、休憩 |
13:00 | 3件目の訪問 |
14:30 | 4件目の訪問 |
16:00 | 帰所、記録の作成・主治医への報告 |
17:00 | 翌日の準備、ミーティング |
1回の訪問は、おおむね次の流れで進みます。
・到着後の挨拶と、前回訪問以降の様子の聞き取り
・バイタルサインの測定と全身状態の観察
・医療処置や療養上の世話などのケア
・ご本人・ご家族への説明と相談対応
・次回の訪問予定の確認と退室
記録は訪問先や移動の合間、または帰所後に作成します。訪問中は時間が限られるため、観察とケアの優先順位を事前に決めておくことが大切です。
24時間の連絡体制をとる訪問看護ステーションでは、夜間や休日の連絡に備え、オンコール当番を置きます。電話で相談に応じ、必要と判断した場合は主治医と連絡を取りながら緊急訪問を行います。ターミナルケアのご利用者様の状態が変化したときも、この体制で対応します。
24時間の対応体制は、介護保険では緊急時訪問看護加算(Ⅰ)(Ⅱ)、医療保険では24時間対応体制加算として評価されます。いずれも緊急訪問の回数ではなく体制に対する加算で、連絡相談を担当する者は原則として保健師または看護師とされています。緊急訪問を行った場合は、その訪問の報酬を別に算定します。
算定要件や金額は、【2026年(令和8年度)最新版】訪問看護の緊急時加算とは?要件・単位数・医療と介護の違いを徹底解説にまとめています。
訪問看護は、病院看護とはケアの場と判断の仕方が、訪問介護とは担い手の資格や主治医の指示の有無が異なります。
病院看護と訪問看護の一般的な違いは、次のとおりです。
観点 | 病院看護 | 訪問看護 |
|---|---|---|
ケアの場 | 病棟などの医療機関内 | ご利用者様の自宅 |
主な目的 | 治療の遂行と回復の支援 | 生活の中での療養の継続 |
判断の仕方 | 医師・同僚にすぐ相談しやすい | 訪問先で状況を判断し、必要に応じて相談 |
関わる期間 | 入院期間中 | 在宅療養が続く期間 |
主な連携先 | 院内の医師・多職種 | 主治医・介護支援専門員など地域の関係者 |
訪問看護では、ご利用者様の自宅の環境に合わせて物品を工夫して使うこともあります。また、ご利用者様の生活の場にお邪魔する立場として、ご本人やご家族の価値観を尊重した関わり方が求められます。
訪問看護と訪問介護の主な違いは、次のとおりです。
観点 | 訪問看護 | 訪問介護 |
|---|---|---|
主な担い手 | 看護職員、リハビリ職など | 訪問介護員など |
主なケア内容 | 療養上の世話、診療の補助 | 身体介護、生活援助 |
指示・計画 | 主治医の指示書 | ケアプランに沿った計画 |
両方のサービスを利用する場合は、家事などの生活援助を訪問介護が担うなど、役割を分担して連携します。
スケジュール調整は、管理者の時間を大きく占めることがある業務です。ここでは、調整の時間を減らし、カンファレンスの時間を確保した事例をご紹介します。
株式会社SORUKKA様は、和歌山県で訪問看護ステーションを運営しています。2025年1月の事例公開時点で3拠点、ご利用者様は270〜280人、職員は看護師やリハビリ職など40人でした。
導入前は、1人の職員がExcelでスケジュールを作成していたため業務が属人化し、管理業務のほとんどをスケジュール調整が占めていたうえ、訪問予定の抜けが発生することもあったといいます。
そこで同社は、当社の訪問スケジュール・訪問ルートの自動作成クラウド『ZEST』を導入しました。その結果、スケジュール管理にかかる時間は以前の5分の1程度になりました。
「訪問予定が抜けてしまっているのではないかという精神的な不安が無くなりましたね」との声も聞かれています。生まれた時間は、ご利用者様のカンファレンスや営業などに充てているといいます。
また、スケジュールのデータをもとに経営可視化ダッシュボード『ZEST BOARD』で職員の移動時間や訪問時間を可視化し、業務量のバランスを数字で確認できるようになったといいます。これらは同社への取材に基づく個別の事例です。
事例詳細:株式会社SORUKKA様の導入事例

訪問看護の仕事は、観察や医療処置、療養上の世話、ご家族への支援といった訪問先でのケアと、計画書・記録の作成や主治医・介護支援専門員との連携、スケジュール調整などの訪問以外の業務で成り立っています。業務の全体像を把握することが、新人の育成や業務分担を考える材料になります。
まずは自事業所で訪問以外の業務を誰がどれだけ担っているかを書き出してみてください。看護職員以外でも担える業務や、特定の職員に偏った業務が見えると、見直しの優先順位をつけやすくなります。
中でもスケジュールの作成と調整は、訪問件数と職員の働きやすさの両方に関わる業務です。訪問スケジュール・ルートを自動で作成する『ZEST SCHEDULE』は、ご利用者様の希望時間や職員の勤務シフト・スキル、移動効率といった条件を考慮した予定を組み、管理者の作成・調整にかかる負担の軽減を支援します。
あわせて、現場スタッフ向けモバイルアプリ『ZEST HUB』では、スマートフォンから訪問予定や移動時間、空き時間、申し送りのメモを一目で確認できます。空き時間を活用して記録や申し送りを計画的に進めやすくなり、訪問以外の業務にゆとりを持たせる働き方を支援します。
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