
在宅療養を支えるステーションにおいて、ご利用者様やご家族に「24時間365日の安心」を提供する体制は、地域での信頼獲得や、経営の安定化にも繋がります。その体制と実際の急変対応を評価するのが「緊急時加算」です。
しかし、緊急時加算は医療保険と介護保険で算定ルールや要件が複雑に異なります。2024年度の改定内容が令和8年度(2026年度)も引き継がれている一方、実際の訪問開始時刻と終了時刻の明確化など周辺ルールは厳格化されました。請求ミスや実地指導での返還リスクを防ぐため、周辺ルールを含め正しく理解し、対策を講じることが重要です。
本記事では、緊急時加算の最新算定要件や単位数を徹底解説するとともに、令和8年度に厳格化されたルールへの実務対策とICT活用による業務効率化について解説します。

緊急時の対応体制や、実際の緊急訪問を評価する加算は、適用される保険制度(介護保険・医療保険)によって名称や評価対象が異なります。
最大の違いは、介護保険の加算が「体制(24時間対応できる仕組み)」そのものを評価するのに対し、医療保険の加算は「体制(仕組み)」と「行動(実際の緊急訪問実績)」に分かれて評価される点にあります。
保険制度 | 評価対象となる加算 | 算定頻度 | 評価内容のポイント |
|---|---|---|---|
介護保険 | 緊急時訪問看護加算 | 月1回 | 24時間連絡・対応が可能な体制そのものを評価(緊急訪問実績がなくても算定可能)。 |
医療保険 | 24時間対応体制加算 | 月1回 | 24時間連絡・対応が可能な体制そのものを評価(介護保険の緊急時訪問看護加算に相当)。 |
医療保険 | 緊急訪問看護加算 | 1日1回 | 医師の指示に基づき、計画外の緊急訪問を実際に行った実績を評価。 |
※同一のご利用者様に対して、介護保険の緊急時訪問看護加算と医療保険の24時間対応体制加算を同月に重複して算定することはできません。
介護保険における「緊急時訪問看護加算」は、要介護1〜5(介護予防は要支援1〜2)のご利用者様を対象に、月1回、その月の初回訪問時に算定します。
2024年度の介護報酬改定において、看護職員のオンコール負担を軽減し、持続可能な24時間体制を構築する取り組みを評価するため、「加算(Ⅰ)」と「加算(Ⅱ)」の2つの区分に細分化されました。この区分は、令和8年度現在も現行ルールとして適用されています。
加算区分 | 指定訪問看護ステーション | 病院または診療所(みなし) | 一体型定期巡回・随時対応型事業所 |
|---|---|---|---|
緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | 600単位 / 月 | 325単位 / 月 | 325単位 / 月 |
緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | 574単位 / 月 | 315単位 / 月 | 315単位 / 月 |
出典:厚生労働省「第259回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3」
ご利用者様やその家族等からの相談や連絡に24時間365日対応できる体制を確保していること。
計画的に訪問することが決まっていない緊急時訪問(計画外の訪問)ができる体制を確保していること。
ご利用者様やご家族に対し、加算算定について書面で説明し、個別の同意を得ていること。
各都道府県(または市区町村)に必要書類を提出し、受理されていること。
加算(Ⅰ)を算定する場合、共通要件に加えて、「看護職員の勤務負担を軽減する十分な業務管理体制」が求められます。具体的には、以下の負担軽減策(ア〜カ)のうち、「ア」または「イ」を必ず1つ以上含む、合計2項目以上をクリアし、実践している必要があります。
(ア)夜間対応(オンコール対応等)した翌日の勤務間隔の確保(勤務間インターバル)
(イ)夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
(ウ)夜間対応後の暦日の休日確保
(エ)夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
(オ)ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
(カ)電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保
加算取得のために、勤務状況の確認や集計作業に時間を費やすことは経営者、管理者の大きな負担になります。
そこで、ゼストが提供する「経営可視化ダッシュボード『ZEST BOARD』」を利用することで、スタッフ別の訪問件数や夜間対応の実績を自動で集計・可視化でき、負担の偏りを抑えたシフト調整が可能になります。働きやすい環境づくりは、スタッフの定着にも貢献します。
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オンコールを担当する看護職員の負担を軽減するため、一定の要件をすべて満たせば、事務職員や理学療法士など「看護職員以外の職員」が一次的に電話連絡を受ける体制も認められています。
マニュアルの整備:相談内容に応じた電話対応の流れ、専門的意見を求められた際の看護師等への速やかな連絡方法、連絡・指導内容の記録および情報共有方法がマニュアル化されていることが欠かせません。
看護師連携と自己判断の禁止:緊急訪問の必要性の判断を看護師が速やかに行える体制が求められます。理学療法士等の自己判断は想定されておらず、必ず看護師等への連携が必要です。
管理責任と記録の義務:管理者は電話を受ける職員の勤務状況を明らかにし、報告を受けた看護師は、その報告内容等を必ず「訪問看護記録書」に詳細に記録する必要があります。
医療保険における緊急時の評価は、体制を評価する「24時間対応体制加算」と、実際の緊急訪問実績を評価する「緊急訪問看護加算(および精神科緊急訪問看護加算)」に分かれています。
ご利用者様やご家族から電話等により看護に関する意見(相談)を求められた際に、常時対応できる体制を整えている場合に算定します。
・算定料(※令和8年6月1日施行時点):
24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合:6,800円
上記以外の場合:6,520円
・算定料(1日につき1回算定)(※令和8年6月1日施行時点)
同一月の14日目まで:2,650円 / 日
同一月の15日目以降:2,000円 / 日
・主な算定要件:
定期的な訪問看護計画に含まれていない、急変などの緊急要請であること。
緊急の求めに応じ、主治医の指示を得て訪問看護を実際に行うこと。
24時間対応できる体制を確保し、連絡担当者名や緊急時の注意事項などを記載した文書を事前にご利用者様に提供していること。
実施日時・対応内容・経過を訪問看護記録書に詳細に記録し、速やかに主治医へ報告すること。
出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件」
令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、D to P with N(医師と患者・看護師等)のオンライン診療における評価が明確化され、訪問看護ステーション側で算定できる「訪問看護遠隔診療補助料(1日につき2,650円 / 265点)」が新設されました。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第647回)資料 総-1個別改定項目について

今回の改定において、緊急時加算そのものの点数や基本要件に変更はありませんが、現場に影響を及ぼす周辺ルールが厳格化されました。ここでは、実地指導対策として押さえておくべきポイントを解説します。
適正な訪問看護の提供を推進する観点から、毎回の訪問時における訪問看護記録書に、「実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻」を分単位で正確に記載することが明確に義務づけられました。感覚で記録したり、レセプト請求時間とカルテ記録の整合性が取れなかったりすると、算定が認められないおそれがあります。
「訪問時間は30分以上を標準とし、20分を下回るものは算定できない」というルールが新設されました。緊急訪問等で滞在時間が20分未満となった場合、やむを得ない事情を記録に残していない限り算定できなくなります。また、前回から2時間未満の間隔で訪問を行った場合は合算して1回とみなされるため、緻密な時間管理が必須となります。
同一建物の範囲に「同一敷地内の建物」が加わりました。敷地内に複数棟がある場合、敷地全体で訪問人数を合算して数えるルールに変更されています。あわせて基本療養費(Ⅱ)の人数区分が細分化され、収益管理が複雑化しています。
関連記事: 令和8年度診療報酬改定(訪問看護)のポイントをわかりやすく解説

行政の運営指導で指摘されやすい代表的な指摘事例と対策を解説します。
重要事項説明書の一部に加算の説明が記載されているだけで、個別に同意したかどうかが書面で確認できないケースが指摘されています。重要事項説明書とは別に、「緊急時訪問看護加算(および24時間連絡体制)に対する個別の説明・同意書」を独立した様式で作成し、説明日・説明者・同意署名を確実に得て保管することが求められます。
加算を取得していながら、電話を受けた日時や主訴、看護師の判断プロセス、訪問した時間の詳細が記録されていないケースです。運営指導の基準を満たすため、以下の項目を記録する運用が欠かせません。
連絡日時(電話を受けた時刻)
連絡者(本人、家族、ケアマネジャー等)
ご利用者様の状態、具体的な主訴(相談内容)
電話対応した職員の氏名
看護師の判断内容(緊急訪問の要否、その理由)
訪問看護を実施した場合の「実際の訪問開始時刻・終了時刻(分単位)」
訪問した場合の具体的な看護内容・医療処置
訪問しなかった場合の電話による具体的な指導・助言内容
主治医等への報告・連絡状況
対応後のご利用者様の経過・結果
数年おきに改定される算定要件やルールに手作業で対応することは、スタッフの事務負担を増やし、算定漏れのリスクを高めます。ここでは、スケジュール管理ツール『ZEST』を活用して複雑なルールに対応するアプローチをご紹介します。

急なオンコール要請があった際、『ZEST SCHEDULE』を活用することで、スタッフの現在地や空き状況を可視化し、誰が急行できるかを迅速に判断できます。また、緊急訪問は予定の組み込みを怠ると実績自体が漏れてしまい、加算の算定漏れに繋がります。ZESTでは、その場で簡単にZESTに緊急訪問の予定を追加できるため、加算の算定漏れの防止にも役立ちます。

日々の訪問業務のみならず、緊急時の訪問にも、スマートフォンから自分の予定を確認できるアプリ『ZEST HUB』の活用が有効です。緊急で予定を割り振られた場合でも、訪問先をクリックすればGoogleマップと連携し、現在地から効率の良い移動ルートをすぐに表示します。

訪問看護における緊急時加算は、在宅療養を支える社会的価値の高い加算であると同時に、ステーションの重要な収益源にもなり得ます。令和8年度改定では、分単位での訪問時間記録や同一敷地内建物の合算集計などの周辺ルールが見直されました。
まずは自事業所の記録運用や同意書の整備状況を確認し、必要な対策を見極めることから始めましょう。あわせて、複雑化する予定調整や実績管理の手間を抑えるうえで、ICTの活用は有力な選択肢になります。
ZESTは、訪問スケジュール・訪問ルートの自動作成を通じて、管理者様の負担軽減を支援します。無料オンライン説明会も毎日開催しておりますので、ご興味がございましたらぜひお申込みください。
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