看取りや医療依存度の高いご利用者様の受け入れ、24時間対応、人員体制の維持。日々の運営に追われるなかで、「機能強化型を目指すべきか」の判断がつかずにいる訪問看護ステーションの経営者・管理者様も多いのではないでしょうか。
機能強化型訪問看護ステーションは、訪問看護管理療養費の上位区分として通常より高い報酬で評価される仕組みです。2026年度診療報酬改定では、精神科対応を評価する「機能強化型4」が新設され、注目度が高まっています。
本記事では、経営の視点から機能強化型という選択肢を解説します。読み終えるころには、自ステーションが目指すべきか、目指すなら何から着手すべきかを判断しやすくなります。

機能強化型訪問看護ステーションとは、医療保険の訪問看護管理療養費の上位区分である機能強化型1〜4を届け出て算定するステーションです。ここでは、評価の仕組みと現状、2026年度診療報酬改定のポイントを解説します。
訪問看護管理療養費とは、安全な提供体制を整え、計画的な管理を継続して行う訪問看護ステーションが、医療保険の訪問看護で訪問のたびに算定する療養費です。金額は月の初日とそれ以降で分かれ、機能強化型はこのうち月の初日の上位区分として、24時間対応や看取り、重症者の受け入れ、地域連携といった機能を備えたステーションを高く評価します。
通常のステーションとの違いは、報酬の水準そのものというより、その前提となる体制と実績にあります。両者の違いを大まかに比較すると、次の表のとおりです。
観点 | 通常型 | 機能強化型 |
報酬(月の初日) | 7,710円 | 9,030〜13,760円 |
人員 | 常勤換算2.5人以上 | 常勤看護職員4〜7人以上 |
24時間対応 | 任意(加算で評価) | 届出が必須 |
看取り・重症者 | 要件なし | 区分に応じた実績要件 |
このように、常勤看護職員の人数や24時間対応、看取り件数などの要件を満たして届出を行うことで、月の初日の管理療養費が引き上がる仕組みです。
なお、医療保険の訪問看護療養費は2026年度(令和8年度)診療報酬改定が基準です。介護保険の訪問看護費は2026年6月に臨時改定がありましたが、基本の単位数は2024年度(令和6年度)改定のまま据え置かれ、訪問看護が介護職員等処遇改善加算の対象に加わる見直しが行われました。機能強化型は医療保険側の枠組みである点を押さえておきましょう。
在宅医療の推進により、医療依存度の高いご利用者様や看取り期のご利用者様が自宅で療養するケースが増えています。こうしたご利用者様を地域で支えるには、24時間対応や重症者の受け入れができる体制が欠かせません。
一方で、訪問看護ステーションは小規模な事業所が多く、夜間対応から看取りまで担える事業所は限られているのが実情です。在宅療養を最後まで支える中核的なステーションを増やすため、体制の整った事業所を報酬で評価する仕組みとして機能強化型が設けられました。
中央社会保険医療協議会の総会(第626回)資料(令和7年11月12日)によると、機能強化型の届出は963事業所(令和6年8月時点)です。一方、厚生労働省「令和6年 介護サービス施設・事業所調査」では、全国の訪問看護ステーション数は18,042事業所(令和6年10月時点)とされています。出典が異なるため概算ですが、機能強化型は全体の約5%にとどまる計算です。
つまり、機能強化型の届出を行っているステーションは地域でも少数です。届出の受理状況は、事業所所在地を管轄する地方厚生局のウェブサイトで都道府県別に確認できます。
2026年度(令和8年度)診療報酬改定は、令和8年(2026年)6月1日に施行されました。機能強化型に関わる変更点は大きく2つあります。
1つ目は、月の初日の訪問看護管理療養費の引き上げです。機能強化型1〜3を含む各区分の金額が引き上げられ、機能強化型と機能強化型以外の評価の差が広がりました。
2つ目は、「機能強化型4」の新設です。精神科訪問看護において支援ニーズの高いご利用者様を受け入れ、24時間対応と地域の関係機関との連携体制を整えたステーションを評価する区分で、看取り実績を軸とする機能強化型1・2とは異なる評価軸が加わりました。
あわせて、月の2日目以降の管理療養費は、従来の訪問看護管理療養費1・2が統合されて施設基準の届出が不要となり、単一建物にお住まいのご利用者様の人数と訪問日数に応じて細分化されました。

機能強化型を算定するには、区分ごとに定められた人員・実績・体制の要件をすべて満たしたうえで届出を行う必要があります。ここでは、共通要件と区分別の違い、報酬額と届出の流れを解説します。
機能強化型1〜4には、次のような共通の要件があります。
・ 訪問看護管理療養費の算定要件(安全な提供体制、主治医との連携など)を満たしていること
・ 従業者に占める看護職員の割合が6割以上であること
・ 24時間対応体制加算の届出を行っていること
・ 休日・祝日も含めた計画的な訪問看護を行い、営業日以外も24時間365日対応できる体制を確保していること
・ 地域の医療機関やステーション、住民等への研修や情報提供・相談対応の実績があること
このうち24時間対応体制加算の届出は全区分の前提であり、機能強化型を目指すうえで最初に整えるべき体制といえます(詳細は後述します)。
看取りと規模を軸とする機能強化型1・2と、地域連携や精神科対応を軸とする機能強化型3・4では、要件の性格が異なります。まず、機能強化型1・2の主な要件です。
要件項目 | 機能強化型1 | 機能強化型2 |
看護職員数 | 常勤7人以上(うち1人は常勤換算可) | 常勤5人以上(うち1人は常勤換算可) |
看取り・重症児の実績 | ターミナルケア前年度20件以上※ | ターミナルケア前年度15件以上※ |
重症度の高いご利用者様 | 別表7該当 月10人以上 | 別表7該当 月7人以上 |
計画作成体制 | 同一敷地内の居宅介護支援事業所等※ | 同一敷地内の居宅介護支援事業所等※ |
専門研修修了の看護師 | 配置 | 配置が望ましい |
続いて、機能強化型3・4の主な要件です。
要件項目 | 機能強化型3 | 機能強化型4 |
看護職員数 | 常勤4人以上(常勤換算不可) | 常勤4人以上(常勤換算不可) |
重症度の高いご利用者様 | 別表7・8等 月10人以上※ | 別表7・8該当 月3人以上 |
精神科の重点支援 | ― | 対象のご利用者様 月7人以上※ |
退院時共同指導 | 直近3か月の算定実績 | 直近3か月の算定実績 |
地域への研修・連携 | 地域向け研修 年2回以上 | 研修年2回以上+連携機関5か所以上 |
専門研修修了の看護師 | 配置が望ましい | 配置が望ましい |
※印の要件には代替条件や付随する条件があります(例:機能強化型1・2の看取り実績は重症児の受け入れ数との組み合わせでも可。計画作成体制は事業所の設置に加え、対象となるご利用者様の1割程度の計画作成が必要)。機能強化型4の精神科の重点支援は、入院歴の要件とGAF尺度〈機能の全体的評定尺度〉40以下の両方に該当する方、または精神科重症患者支援管理連携加算の算定対象の方を合計して数えます。このほか機能強化型3・4には、同一敷地内に同一開設者の医療機関がある場合に限り、その医療機関以外を主治医とするご利用者様の割合の要件があります。正確な内容は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」に掲載されている告示・留意事項通知でご確認ください。
2026年度改定後の月の初日の管理療養費は次のとおりです。
区分 | 金額(月の初日) | 主な位置づけ |
機能強化型1 | 13,760円 | 大規模・看取り実績の充実 |
機能強化型2 | 10,460円 | 中規模・看取り実績あり |
機能強化型3 | 9,030円 | 重症者対応・地域連携の拠点 |
機能強化型4 | 9,030円 | 精神科対応(2026年新設) |
機能強化型以外 | 7,710円 | 通常の訪問看護ステーション |
機能強化型3と機能強化型4は同額の9,030円ですが、機能強化型3が別表7・8に該当するご利用者様など重症度の高い方への対応と地域連携を評価するのに対し、機能強化型4は精神科対応を評価する別の区分です。金額だけで混同しないよう注意しましょう。
届出は、「機能強化型訪問看護管理療養費に係る届出書(別紙様式6)」を、事業所所在地を管轄する地方厚生局へ提出します。届出様式や記載例は、各地方厚生局が公開しています。
算定の起点は提出日ではなく受理された日です。各月の月末までに受理されればその翌月から、月の最初の開庁日に受理されればその月の1日から算定できます。届出は要件を満たしていることの申告であり、要件の充足と維持が算定の前提です。
参考:九州厚生局「訪問看護ステーションの基準に関する届出について(令和8年度診療報酬改定)」

機能強化型は要件のハードルが高い一方、届出により収益・紹介・採用の3つの面で経営上の効果が期待できます。ここでは事業者の視点でメリットを解説します。
最も直接的なメリットは、月の初日の管理療養費の増額です。機能強化型1と機能強化型以外では1人あたり月6,050円の差があり、月の初日の算定はご利用者様ごとに発生するため、ご利用者様の人数に応じて差額が積み上がります。仮に医療保険のご利用者様100人分の算定があれば、単純計算で月60万円超の差になります。
ただし、これは制度上の金額差であり、届出をすれば必ず増収になるわけではありません。人員増による人件費など、要件を維持するコストとのバランスを見ることが重要です(後述します)。
24時間対応や看取り・重症者の受け入れ体制は、医療機関の退院調整担当者や介護支援専門員(ケアマネジャー)が紹介先を選ぶ際の判断材料になります。前述のとおり機能強化型の届出は全国でも一部にとどまるため、地域における希少性そのものが強みとなり、医療依存度の高いご利用者様の紹介・依頼の増加が期待できます。
紹介元との関係づくりを含む経営全体の安定化は、次の記事で詳しく解説しています。
機能強化型の要件には、人材育成のための研修や専門研修を修了した看護師の配置が含まれます。こうした教育体制の充実は、事業所の採用力を高める要素になります。学べる環境や重症者対応の経験を積める体制を整えていることは求人時のアピール材料となり、スタッフの定着にもつながりやすくなります。
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全区分に共通する要件のうち、体制づくりの中核となるのが24時間対応です。24時間対応体制加算の届出がなければ、どの区分も算定できません。ここでは、必要な体制と、負担を抑えて運用する工夫を解説します。
24時間対応をめぐる評価は、保険制度によって仕組みが分かれています。
保険制度 | 加算の名称 | 評価の内容 |
医療保険 | 24時間対応体制加算(イ・ロ) | 常時の相談対応と緊急時訪問の体制(月1回) |
介護保険 | 緊急時訪問看護加算(Ⅰ・Ⅱ) | 24時間の連絡・緊急時訪問の体制(月1回) |
※医療保険の24時間対応体制加算は、夜間対応の負担軽減の取り組みを行う場合が「イ」、それ以外が「ロ」です。介護保険の緊急時訪問看護加算も、同様の取り組みの有無で(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれます。区分と要件は、医療保険が2026年度(令和8年度)診療報酬改定、介護保険が2024年度(令和6年度)介護報酬改定に基づきます。
機能強化型の要件になっているのは、このうち医療保険の24時間対応体制加算です。ご利用者様やご家族からの電話等による相談に常時対応できる体制と、必要に応じて緊急時訪問看護を行える体制を整え、届出を行います。
介護保険側の緊急時訪問看護加算の単位数や算定要件の詳細は、次の記事で解説しています。
関連記事:【2024年度報酬改定対応】訪問看護の緊急時加算を徹底解説!算定要件、単位数、医療保険との違いと注意点
24時間対応で課題になるのが、夜間・休日のオンコール(電話待機)を担うスタッフの負担です。特定の職員に偏った状態が続くと、疲弊や離職の原因になりかねません。
負担を抑える工夫として通知に挙げられているのは、夜間対応した翌日の勤務間隔の確保、夜間対応の連続回数を2連続までとすること、夜間対応後の休日の確保、夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫、ICT〈情報通信技術〉等の活用、連絡・相談を担当する職員への支援体制の確保です。
医療保険の24時間対応体制加算「イ」は、このうち前の2つのいずれかを含む2項目以上を満たすことが要件です。負担軽減の仕組みづくりが、そのまま報酬上の評価にもつながります。

要件と報酬を確認したうえで重要になるのが、要件をどう満たしていくかという実務です。ここでは、多くのステーションが課題とする3つのテーマと進め方を解説します。
機能強化型1は常勤の看護職員7人以上、機能強化型2は5人以上が必要で、非常勤の常勤換算は1人分までしか算入できません。機能強化型3・4は常勤4人以上と数は少ないものの、常勤職員のみで数えるため常勤換算が使えず、人員のハードルは決して低くありません。採用の強化とあわせて、離職を防ぐ働きやすい環境づくりが欠かせません。
常勤換算の考え方や算出方法は、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:訪問看護ステーションにおける人員基準って?常勤換算の算出方法も解説
機能強化型1・2のターミナルケア件数は「前年度」、別表7に該当するご利用者様の人数は「直近1年間」の実績で判定されます。つまり、届出の1年以上前から実績を積み上げる必要があります。看取りや医療依存度の高いご利用者様を受け入れられる体制を整え、受け入れが可能であることを医療機関や介護支援専門員に継続的に伝えていくことが、実績づくりの出発点です。
ターミナルケアを評価する制度の詳細は、次の記事で解説しています。
関連記事:【訪問看護】ターミナルケア加算・療養費:2024年改定対応 算定要件と実務上の重要ポイント
機能強化型3・4では、地域の医療機関やステーションを対象とした研修を年2回以上実施することが求められます。機能強化型4ではさらに、連携する保険医療機関・障害福祉サービス等事業者・障害児相談支援事業所等・介護保険サービス事業者・行政機関の5分類のうち3分類以上と連携し、合計5か所以上の連携機関それぞれと年3回以上面会して記録を残すことが要件です。日ごろの地域連携活動を、記録に残る形で計画的に行う体制づくりが必要になります。
なお、機能強化型の維持には相応のコストも伴います。人員増による人件費、24時間対応や研修運営の負担は小さくありません。報酬の増額と要件維持のコストを比較し、自ステーションの体力に見合う区分から段階的に目指すことが現実的な進め方といえます。
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事例詳細:聖隷福祉事業団様の導入事例



機能強化型の検討で質問が多いのは、介護保険との関係と届出時期の2点です。
Q.介護保険のご利用者様にも機能強化型の報酬は適用されますか。
A.適用されません。機能強化型訪問看護管理療養費は医療保険の枠組みであり、介護保険の訪問看護には管理療養費の仕組みがありません。ただし、24時間対応や看取りなど機能強化型で求められる体制は、介護保険側では緊急時訪問看護加算や看護体制強化加算などで評価されます。
Q.届出はいつまでに、どこに行えばよいですか。
A.別紙様式6の届出書を、事業所所在地を管轄する地方厚生局へ提出します。月末までに受理されれば翌月から、月の最初の開庁日に受理されればその月の1日から算定できます。届出後に実績が要件を下回った場合には、変更の届出が必要です。

機能強化型訪問看護ステーションは、24時間対応・看取り・重症者受け入れ・地域連携といった体制を整えたステーションを、訪問看護管理療養費の上位区分として評価する仕組みです。2026年度改定で報酬が引き上げられ、精神科対応の機能強化型4も加わったことで、目指す選択肢は広がっています。
一方で、要件は人員・実績・体制の多方面にわたり、届出の1年以上前からの準備が必要です。まずは自ステーションの看護職員数、看取り・重症者の受け入れ実績、24時間対応の状況を数値で把握し、届け出られる区分と不足している要件を見極めることから始めましょう。
体制づくりを支えるうえでは、日々の運用の効率化も欠かせません。訪問スケジュール・訪問ルートを自動で作成するZEST SCHEDULEは、職員の勤務シフトやスキル、移動効率といった複雑な条件を考慮した予定を自動で作成し、大規模化に伴うスケジュール作成の負担軽減を支援します。また、経営可視化ダッシュボード『ZEST BOARD』は、訪問件数や訪問時間、稼働率などの経営指標を自動で集計・可視化します。体制を拡大する局面でも、運営の状況を数値で確認しながら判断を進められます。
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