
2024年度の介護報酬改定で、介護職員等処遇改善加算の内容が改定され、加算率の引き上げが実施されました。この記事では、新しい「介護職員等処遇改善加算」について、単位数や計算方法、算定要件などを詳しく解説いたします。


介護職員処遇改善加算は、介護職員の給与や労働環境の改善を図るために設けられました。今までは、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類がありました。
しかし、それぞれ算定要件や加算率が異なるため、事業所にとって理解が難しく、事務作業の負担も大きくなっています。このため、加算を取得できるにもかかわらず、取得しない事業所が多いことが課題となっていました。
そこで2024年度の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善を目的とした加算について、大きな見直しが行われました。「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類の加算が一本化され、新たに「介護職員等処遇改善加算」として創設されました。これは、複雑な制度を簡素化し、事業所の事務負担を軽減することで、より多くの事業所で加算が取得され、介護職員の処遇改善に繋がることを目的としています。訪問介護事業においては、加算の取得値が最大2.1%上昇することが見込まれています。
業態によって加算率が分けられていますが、訪問介護の加算率は以下のように定められました。
区分 | 加算率 |
|---|---|
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) | 24.5% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) | 22.4% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 18.2% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 14.5% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(1) | 22.1% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(2) | 20.8% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(3) | 20.0% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(4) | 18.7% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(5) | 18.4% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(6) | 16.3% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(7) | 16.3% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(8) | 15.8% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(9) | 14.2% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(10) | 13.9% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(11) | 12.1% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(12) | 11.8% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(13) | 10.0% |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)(14) | 7.6% |
※介護職員等処遇改善加算(Ⅴ)は、経過措置として令和7年3月31日まで算定が可能。

3つの加算が1本化されたことにより、算定要件も変更となりました。
算定要件は大きく分けて「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つの種類に分けられます。それぞれの要件について詳しく解説いたします。
令和6年3月までの算定要件
区分 | 賃金改善Ⅰ | 賃金改善Ⅱ | キャリアパスⅠ | キャリアパスⅡ | キャリアパスⅢ | キャリアパスⅣ | キャリアパスⅤ | 職場環境全体 | 職場環境区分ごと | 職場環境見える化 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | - | (○) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
Ⅱ | - | (○) | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ |
Ⅲ | - | (○) | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | - |
Ⅳ | - | (○) | ○ | ○ | - | - | - | ○ | - | - |
Ⅴ(1) | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
Ⅴ(2) | - | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
Ⅴ(3) | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ |
Ⅴ(4) | - | - | ○ | ○ | - | ○ | - | - | ○ | ○ |
Ⅴ(5) | - | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
Ⅴ(6) | - | - | ○ | ○ | - | ○ | - | - | ○ | ○ |
Ⅴ(7) | - | - | どちらか1つ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | |
Ⅴ(8) | - | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | - |
Ⅴ(9) | - | - | どちらか1つ | - | ○ | - | - | ○ | ○ | |
Ⅴ(10) | - | - | どちらか1つ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | |
Ⅴ(11) | - | - | ○ | ○ | - | - | - | ○ | - | - |
Ⅴ(12) | - | - | どちらか1つ | - | ○ | - | - | ○ | ○ | |
Ⅴ(13) | - | - | どちらか1つ | - | - | - | ○ | - | - | |
Ⅴ(14) | - | - | どちらか1つ | - | - | - | ○ | - | - | |
令和7年4月以降の算定要件
区分 | 賃金改善Ⅰ | 賃金改善Ⅱ | キャリアパスⅠ | キャリアパスⅡ | キャリアパスⅢ | キャリアパスⅣ | キャリアパスⅤ | 職場環境区分ごとに1以上 | 職場環境区分ごとに2以上 | 職場環境見える化 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | ○ | (○) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
Ⅱ | ○ | (○) | ○ | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ |
Ⅲ | ○ | (○) | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | - |
Ⅳ | ○ | (○) | ○ | ○ | - | - | - | ○ | - | - |
キャリアパス要件は、介護職員が将来に向けてキャリアアップを目指せるよう、職場環境の整備や研修機会の提供、適切な賃金体系の構築などを求めるものです。
キャリアパス要件Ⅰ:任用要件・賃金体系の整備等
以下の3点を全て満たしていること
① 介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
② ①に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
③ ①及び②の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
キャリアパス要件Ⅱ:研修の実施等
以下の①と②を満たすこと
①介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、 資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
a 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等 (OJT、OFF-JT 等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行う こと。
b 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇 の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
② ①について、全ての介護職員に周知していること。
キャリアパス要件Ⅲ:昇給の仕組みの整備等
以下の①と②を満たすこと
①介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みである こと。
a 経験に応じて昇給する仕組み
「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
b 資格等に応じて昇給する仕組み
介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されている ことを要する。
② ①の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。 ただし、常時雇用する者の数が 10 人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により上記②の要件を満たすこととしても差し支えない。
キャリアパス要件Ⅳ:改善後の年額賃金要件
経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が年額 440 万円以上であること(新加算等による賃金改善以前の賃金が年額 440 万 円以上である者を除く。)。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金 改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合はこの限りではない。
・ 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・ 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上 げることが困難な場合
さらに、令和6年度中は、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以 上の職員の代わりに、新加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均と する。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たすこととしても差し支えない
キャリアパス要件Ⅴ:介護福祉士等の配置要件
サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していること。具体的には、新加算等を算定する事業所又は併設する本体事業所においてサービス類型ごとに別紙1表4に掲げるサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算又は日常生活継続支援加算の各区分の届出を行っていること。
出典:
厚生労働省 介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
厚生労働省
月額賃金改善要件は、介護職員等処遇改善加算で算定した加算額のうち、どれだけの金額や割合を賃金改善に充てる必要があるのかが定められています。
月額賃金改善要件Ⅰ
新加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当の改善に充てること。
月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当の賃金改善)
令和6年5月 31 日時点で現に旧処遇改善加算を算定しており、かつ、旧ベースアップ等加算を算定していない事業所が、令和8年3月 31 日までの間において、新規に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合
・初めて新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定し、旧ベースアップ等加算相当の加算額が新たに増加する事業年度において、当該事業所が仮に旧ベースアップ等加算を算定する場合に見込まれる加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施しなければならない。
・その際、当該基本給等の引上げは、ベースアップにより行うことを基本とする。
令和7年度以降に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合は、別紙1表5-1に掲げる処遇改善の取組を実施すること。
・新加算Ⅰ・Ⅱ:以下区分ごとに2以上の取組を実施。(生産性向上は3つ以上うち⑰と⑱は必須)職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表すること。
・新加算Ⅲ・Ⅳ:以下区分ごとに1以上を実施すること。(生産性向上は2つ以上)
区分 | 内容 |
|---|---|
入職促進に向けた取組 | ①法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 |
資質向上やキャリアアップに向けた支援 | ⑤働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等 |
両立支援・多様な働き方の推進 | ⑨子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 |
腰痛を含む心身の健康管理 | ⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 |
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 | ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築を行っている |
やりがい・働きがいの醸成 | ㉕ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 |
体制等状況一覧表(体制届出)等の届出を実施
介護職員等処遇改善加算は「体制等状況一覧表」を提出することで、算定することができます。
この書類には、事業所がどのようなサービスを提供し、どのような体制で運営されているのか、そしてどの加算を取得したいのかといった情報が記載されます。
提出先は、事業所が所在する都道府県などの指定権者で、サービスの算定を開始する月の前月15日です。
※都道府県によって、期限が異なる場合がございます。詳しくは事業所が所在する都道府県の情報をご確認ください。
処遇改善計画書等の作成・提出
2024年度の介護報酬改定で導入された新しい加算を算定するためには、処遇改善計画書の作成が必須となります。
この計画書には、介護職員の賃金改善に向けた具体的な計画や、加算の算定要件を満たしていることを示す内容などを記載し、作成した処遇改善計画書は、事業所が所在する都道府県知事などへ提出する必要があります。また、提出後も、計画書の内容を裏付ける資料とともに、2年間保管しておく必要がある点に注意が必要です。
実績報告書等の作成・提出
介護事業所が処遇改善加算を算定した後は、その実績を報告する書類を提出する必要があります。この「実績報告書」には、介護職員の賃金改善がどのように行われたのか、加算の算定要件を満たしていたのかといった内容を具体的に記載します。
提出期限は、各事業年度の最後の支払いがあった月の翌々月末日までです。
例えば、2024年度であれば、通常は2025年3月分の支払いが最後の支払いとなるため、実績報告書の提出期限は2025年7月31日となります。
実績報告書は、加算が適切に活用され、実際に介護職員の処遇改善に繋がっているかを確認するための重要な資料です。実績報告と根拠になる資料とともに2年間保存することが義務付けられています。
利用者さんの同意書
加算によって介護職員の待遇が改善され、サービスの質向上に繋がる一方で、利用者さん側の負担も増えるため、加算を算定する前に、利用者さんとそのご家族に対して、重要事項説明書と同意書を用いて、加算の内容や自己負担額の変化について丁寧に説明する必要があります。これらの書類を用いて十分な説明を行い、利用者さんからの同意を得ることが、加算算定の前提条件となります。
同意書の提出時期については、現時点では明確な規定はありませんが、処遇改善計画書と同様に、加算算定前に提出する必要があると考えられます。
処遇改善加算は、1か月あたりの総単位数に加算率をかけ合わせて算出します。
まず1か月当たりの総単位数を以下の計算式で算出します。
▽1か月当たりの総単位数の算出方法
1か月の総単位数=前年度1~12月の介護報酬総単位数÷12
算出した1か月当たりの総単位数を以下の計算式にあてはめて加算単位数を求めます。
▽加算単位数の算出方法
加算単位数=1カ月あたりの総単位数×サービス類型別加算率

2024年度の報酬改定時に厚生労働省より発表された、処遇改善加算に関するQ&Aの一部をご紹介いたします。
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