
訪問介護ステーションは、利用者が可能な限り住み慣れた自宅で自立した生活を送れるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)などが居宅を訪問して支援を提供する事業所です。この「ホームヘルプ」サービスを実施する事業所を開設し、介護保険サービスを提供するためには、厚生労働省が定めた指定基準をクリアし、指定を受けることが義務付けられています。
本記事では、訪問介護ステーションの開設に必要な指定基準の3つの主要な要素と、開業までの具体的なプロセスについて詳細に解説します。


訪問介護事業所の開設に際してクリアすべき指定基準には、「運営基準」「設備基準」「人員基準」の3つがあります。これらの基準は、指定を受けた後も継続して満たし続けることが求められるルールです。
1. 人員基準:事業所を運営するために最低限配置すべき職種や人数に関する基準。
2. 設備基準:事務室や相談室など、事業を行うために最低限設置すべき設備や備品に関する基準。
3. 運営基準:サービスの提供や事業所の運営において遵守すべき手続きや、利用者への説明事項などを定めた基準。
地域独自の基準の存在:厚生労働省令の基準に加え、事業所を開設する各自治体(都道府県)が、地域の特性に応じて条例で独自の基準を設けていることがあるため、事前に開設地の自治体へ確認が必要です。
訪問介護は、主に要介護度1〜5の利用者を対象とし、居宅で日常生活の介助を行うサービスです。
身体介護:食事、入浴、排泄など、利用者の身体に触れて実施する介助。
生活援助:掃除、洗濯、調理、買い物などの家事の援助。
その他:通院時など、必要な外出に関する介助。
サービスは利用者本人を対象とし、日常生活を送る上で必須の行為の援助に限られます。そのため、利用者以外への援助、医療行為に該当する行為、日常的に必要ではない行為は、介護保険サービスとしては提供できません。
介護事業所の収入は、基本的に9割の介護給付と1割の利用者自己負担によって構成されています。基本料金は単位で設定されており、原則1単位10円で計算されますが、地域によって単価が変動します。また、特定の要件を満たした場合、基本単位に加算が上乗せされることがあります。

人員基準は、管理者、サービス提供責任者、訪問介護員の3職種について、配置人数や資格が細かく定められています。
訪問介護員は、常勤換算で2.5人以上の配置が最低限必要です。
介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者などが該当します。また、生活援助中心型のサービスに限定されますが、生活援助従事者研修修了者も訪問介護員となれます。看護師、准看護師、保健師の資格も認められます。
資格要件については、都道府県ごとに独自の定めがある可能性があるため、詳細を開設地の自治体のホームページなどで確認する必要があります。
サービス提供責任者は、利用者数に応じて必要な配置人数が定められています。具体的には、利用者数40人またはその端数を増すごとに1人以上の配置が必要です。
以下のいずれかの資格が必要です。
・ 介護福祉士
・実務者研修修了者
・旧介護職員基礎研修修了者
・旧訪問介護員1級課程修了者
管理者や訪問介護員との兼務が可能です。
常勤のサ責を3名以上配置し、特定の業務に主に従事する者を1人以上配置し、かつソフトウェアやネットワークシステムを活用して業務効率化を図っている場合など、一定の要件をすべて満たせば、利用者50人につき1人の配置が認められます。
管理者は、事業所の責任者として管理業務を行う者であり、常勤で1人配置することが義務付けられています。
管理者としての特別な資格は定められていません。
問介護員やサービス提供責任者として兼務する場合、それぞれの職種の資格要件を満たす必要があります。また、管理者としての業務に支障が出ない範囲で、同じ敷地内に併設された他の施設・事業所の業務(例:サ責、ケアマネジャー)を兼務することは可能です。
訪問介護員の人員基準は「常勤換算」で計算されます。常勤換算とは、非常勤職員が常勤職員「1」に対して何人分に相当するかを算出する方法です。
非常勤職員の常勤換算数は、以下の式で求められます。
勤務時間が不定期な登録ヘルパーについても常勤換算が必要です。実績がある場合は前年度の週当たりの平均稼働時間を用い、実績がない場合は勤務表に明記された確実に稼働できる時間のみを算入します。
職員の働きやすさを高めるため、以下の特例が設けられています。
• 育児・介護休業法による短時間勤務制度を利用する職員は、事業所の所定労働時間が40時間であっても、週30時間以上勤務していれば常勤(1)として扱われます。
• 常勤配置が求められる職員が産休や育休、介護休業を取得した際、同等の資質を持つ複数の非常勤職員を組み合わせて常勤換算を満たすことが認められます。
出展:厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf)
常勤換算方法を用いる場合、非常勤職員は常勤換算で0.5以上の勤務時間がある者に限定される規定があるため、計算が複雑化しやすく、人員不足の要因となりやすい傾向があります。
人員基準に違反した場合、行政による指導の対象となり、指導が改善されない場合は報酬返還、業務停止、最終的には指定取り消しといった厳しい行政処分を受ける可能性があります。過去には、管理者が勤務時間中に別の事業所で勤務していた事例や、雇用契約がない者をサ責として配置していた事例などで指定取り消しが発生しています。
職員の急な退職などで一時的に人員基準が満たせなくなった場合は、発覚した時点で指定権者である都道府県(介護保険課)にすぐに報告・相談することが重要です。事前に相談せず指導で違反が判明した場合、処分に繋がるリスクが高まります。
採用活動に加え、既存職員の離職を防ぐ対策が必須です。介護従事者が離職する主な理由として、「職場の人間関係」「ライフイベント(結婚・出産)」「運営のあり方への不満」などが挙げられています。
• 働き方改革の推進:定期的なスタッフ面談を行い、悩みを相談しやすい環境や意見を言いやすい環境を構築することが重要です。
• 柔軟な勤務形態:直行直帰や中抜け、時短勤務などを積極的に導入し、職員の環境変化に対応できる柔軟な働き方を整えることで、離職を防ぐ効果が期待できます。
設備基準では、事業を行うために必要なスペースと、最低限確保すべき備品が規定されています。
事業所の区画:事業の実施に必要な広さを持ち、専用の区画として確保されていることが求められます。
事務室:職員が勤務し、必要な設備や備品を収容できる広さが必要です。
相談室:利用者やその家族のプライバシーが守られるよう配慮されている必要があり、パーテーションでの間仕切りも認められています。
目安として、事務スペースは10畳前後、相談スペースは3畳程度とされることがあります。
建物構造:戸建てやアパートでも開設可能ですが、車いすの利用などに不便がない構造であることが基本的な要件です。
感染対策:感染症予防のための消毒液などの備品の調達に加え、トイレとは別に、職員が手を洗うための洗面台の設置が必要です。
備品:一般の事務機器、サービス提供に必要な備品、鍵付き金庫・書庫などの調達が求められます。
運営基準は、サービスの質を確保し、適切な事業運営を継続するために事業所が遵守すべき包括的なルールです。
主な規定事項には以下の内容が含まれます。
• サービスの内容や手続きについて利用者や家族に説明し、同意を得ること。
• 正当な理由なくサービスの提供を拒否しないこと。
• 居宅サービス計画に沿ったサービスを提供すること。
• 訪問介護計画を作成すること。
• 管理者およびサービス提供責任者の責務を明確にすること。
• 勤務体制の確保、衛生管理の実施、秘密保持の徹底。
• 苦情処理体制や事故発生時の対応体制の整備。
• 虐待の防止に努めること。
• 同居する家族に対する訪問介護サービスの提供を禁止すること。
これらの基準は、指定申請時だけでなく、事業を継続する上で恒常的に遵守し続ける必要があります。
訪問介護事業所は、個人事業主としては開業できず、必ず法人格を取得しなければなりません。
設立できる法人の種類には、株式会社や合同会社などの「営利法人」と、一般社団法人や社会福祉法人などの「非営利法人」があります。非営利法人は税制上の優遇がある可能性もありますが、設立に関する審査や準備書類が比較的厳格になる傾向があります。
指定基準を満たす事業所の場所を確保し、申請時には基準を満たす最低限の人員を雇用している状態が必要です。設備基準に関して不安がある場合、自治体によっては事業所の図面を持参して事前の相談を受け付けていることがあるため、積極的に利用しましょう。
開業予定地の都道府県のホームページを確認し、指定申請の手引きと必要書類一式を入手します。
申請書類の内容や作成方法、添付書類の要件は自治体ごとに異なることがあります。不明点をその都度自治体の相談窓口で解決しながら準備を進めることで、申請後の是正による遅延を防ぎ、結果として早期の開業に繋がります。
必要な書類が揃ったら申請を行いますが、自治体によっては申請日の予約が必要な場合もあるため、事前に確認し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが成功の鍵となります。

働き方改革が大切なのは分かるけどなかなか、柔軟に対応できない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?魅力的な訪問介護ステーション作りを訪問スケジュール自動作成クラウド『ZEST』がサポートします。

『ZEST』では、スケジュール作成者さんが様々なことを考慮して作成している訪問スケジュールを代わりに作成します。利用者さんと職員のマッチング項目、職員の勤務シフト、移動時間などの条件に加え、担当者の固定やチーム制、ローテーション、複数名による同行訪問、施設やご夫婦への訪問など業界ならではの条件まで考慮し、人が考え抜いたかのような最適解をご提案いたします。
作成時間の効率化でスケジュール作成時間を月間28時間削減し、訪問ルートの最適化月間の移動時間を約30時間削減できたとの調査結果も出ています。
削減した時間を、職員との面談やカンファレンスを行なったり、訪問件数を増やして売上を向上させ、スタッフに還元していくなど時間が生まれることで、働きやすさを向上させることができます。
さらに、訪問予定以外の朝会や担当者会議など社内外の予定もZEST上で管理することができます。その予定に住所情報を入れることも可能なので、それらの住所も考慮した最適なルートを作成できます。この機能の活用で、直行の予定を作り、職員の家の住所にしておいたり、保育園の住所を入れることで、そこからのルートで作成できるので、簡単に柔軟な働き方を取り入れることができます。
2024年3月にリリースをした『ZEST HUB』では、スマートフォンから1日の予定を確認することができます。訪問予定に加え、移動時間と空き時間も明確なので「この空き時間に記録をしよう」と先を見据えたスケジュール管理が可能になります。
さらに『ZEST HUB』上で利用者さん情報、申し送りのメモが確認できることに加え、カルテやレセプト、チャットツールなどにも簡単に遷移できるため、時間がない中でもスムーズに記録・参照ができるため、業務を効率的に進めることができます。
ZESTで作成したスケジュールデータをもとに、経営指標を見える化する「ZEST BOARD」では、訪問件数・時間はもちろんのこと、移動時間や新規利用者数など経営に必要な情報をすぐに集計・グラフ化ができます。また、スタッフ別で訪問件数や訪問時間に加え、独自のアルゴリズムで算出する「移動負荷」「作業負荷」も確認できるため、数値をもとに正しい評価が行なえるようになります。
月間の利用者数も月別で確認できるので、サービス提供責任者の採用のタイミングも検討することができます。

今回は訪問介護ステーションの人員基準について、ご紹介しました。人員基準を守っていくためにはステーションの環境を良くすることがとても重要です。今回の内容をもとに、離職の軽減が実現できますと幸いです。
ZESTでは毎日無料オンライン説明会を行っておりますので、ご興味がございましたら是非お申込みください。
お役立ち情報の他に無料セミナーなどを行っております。実際に『ZEST』を導入して業務効率化に成功している事業所の経営者にご登壇いただくセミナーもございますので、是非ご参加ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お役立ち情報一覧