
訪問看護サービスを提供するにあたり、療養上の目標や達成するための具体的なケア内容を明確にするため、訪問看護計画書の作成は必須となります。
看護師が患者さんの看護問題に対して質の高いケアを提供するためには、適切かつ具体的な看護計画の立案が欠かせません。訪問看護計画は、主にO-P(観察計画)、T-P(援助計画)、E-P(教育計画)の3つの要素から構成されており、これらを正しく理解し活用することで、利用者さんの個別性に応じた質の高い訪問看護を提供できます。
この記事では、訪問看護計画書の意味や、各項目の書き方のポイント、そして具体的な記入例を詳しく解説します。

訪問看護計画書とは、看護の対象となる方が抱えている問題を解決するために、個別の看護目標を達成するプランを記載した文書です。
訪問看護サービスを提供するにあたり、医師が発行した「訪問看護指示書」に従って、サービスを提供するための計画や看護師や介護士が実施する具体的なケア内容を記述します。訪問看護計画書は、厚生労働省のウェブサイトで公開されている指針に従って作成を行います。
訪問看護計画書の様式には、医療保険用、介護保険用、精神訪問看護用などがあり、それぞれのサービス提供に適した要素が組み込まれているため、利用者さんの状態やニーズに応じて使い分けが必要です。
作成された訪問看護計画書は、ケアマネジャー、主治医、利用者さん、ご家族など関係者への提出が義務付けられています。これにより、サービス提供に関与するすべての関係者が計画を理解し、協力できるようにすることが目的です。
看護計画に記載する内容は、患者さんの抱える問題をどのようにすれば解決できるかを考え、以下の5種類の項目に分けて落とし込まれます。
1. 看護診断(看護問題)
2. 看護目標
3. 観察計画(O-P)
4. 援助計画(T-PまたはC-P)
5. 教育計画(E-P)
訪問看護計画書には、これらの他に利用者さんの基本情報(氏名、生年月日、要介護認定の状況、住所など)や、計画の進行状況を追跡するための「年月日」や「問題点・解決策」、「評価」などが含まれます。
訪問看護計画を立てる際に重要な役割を果たすのが、O-P・T-P・E-Pという3つの要素です。これらを理解することで、利用者さんの状態を多角的に捉え、適切なケアを提供することが可能となります。
O-Pは「Observation Plan(観察計画)」の略称です。
これは、看護師による利用者さんの観察項目を列挙する項目であり、利用者さんの状態を正確に把握し、適切なケアを提供するための基礎となる重要な要素です。O-Pには、看護師が利用者さんのことを見て得た情報や、コミュニケーションを通して得た情報が該当します。O-Pを実践し記録することで、利用者さんの小さな変化を早期に発見し、迅速な対応につなげることができます。
O-Pの具体例 |
バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数)の測定と記録 |
血液検査データ |
皮膚の状態(発赤、浮腫、褥瘡の有無)の確認 |
食事摂取量と水分摂取量の記録、水分出納管理 |
排泄状況(回数、量、性状)の観察 |
睡眠状態(時間、質、中途覚醒の有無)の確認 |
痛みの程度とその変化の観察 |
気分や情動の変化、患者さんの発言や行動の観察 |
倦怠感や脱力感の有無 |
T-Pは「Treatment Plan(援助計画)」の略称です。看護問題を解決するために、看護師が利用者さんに実施する看護の内容を記載する項目です。援助計画は、C-P(ケア計画・Care Plan)と表記される場合もあります。
T-Pは、利用者さんの個別性を考慮しながら、具体的かつ実行可能な内容で立案することが重要です。また、第三者が見ても理解しやすいように具体的に記入することが求められます。
T-Pの具体例 |
清潔ケア:入浴介助、清拭、口腔ケア、ベッド上での洗髪 |
排泄ケア:トイレ誘導、おむつ交換、導尿 |
移動の援助:歩行介助、車椅子移乗の補助 |
褥瘡予防のための体位変換、エアマットレスの使用 |
栄養管理:食事介助、経管栄養の実施、食事内容の調整 |
疼痛管理:鎮痛剤の投与、非薬物療法の実施 |
リハビリテーション:ROM運動、筋力トレーニングの補助、活動量を増やすための運動の実施 |
患者さんとのコミュニケーション:話を傾聴し、共感的態度で接する |
E-Pは「Education Plan(教育計画)」の略称であり、日本語では「教育計画」と呼ばれます。
これは、看護目標を達成するために、看護師が利用者さんに指導・教育する事項を記載する項目です。利用者さんが自分の健康状態を認識できるよう、指導や教育を行います。
退院後の服薬指導や生活指導などが挙げられ、利用者さんの状態によってはご家族に指導を行うこともE-Pに含まれます。利用者さんやご家族の理解度や受け入れ状況を考慮しながら、段階的に進めることが求められます。
E-Pの具体例 |
病状の説明 |
退院後の服薬指導や生活に関する指導 |
インスリン自己注射の必要性の説明 |
予防行動の重要性の説明(例:転倒・転落のリスク、誤嚥防止のための嚥下体操など) |
疑問・不安があれば看護師に相談するよう指導 |
ご家族への退院後の自宅環境整備や食事管理についての指導 |
訪問看護計画書において、目標は「看護・リハビリテーションの目標」または「看護の目標」として設定され、具体的な目的やケアプランを設定するための項目です。
目標の設定は、主治医の指示や利用者さんの状態に合わせて具体的に記入されます。
1. 主治医が提供した訪問看護指示書を基に、利用者さんの状態や治療方針を理解します。
2. 利用者さんの身体的・精神的な状態や機能の制限を評価し、ケアの必要性を把握します。
3. 具体的かつ測定可能な目標を設定します。健康状態の向上、機能の回復、症状の軽減、生活の質の向上などが一般的な目標です。
目標を立てる際は、利用者さん自身がどうなりたいかという希望が重要になります。看護計画の目標は、看護師目線ではなく、利用者さん自身が共感し、計画の達成に積極的に協力する可能性が高まるように、利用者さんの視点から設定することが重要です。
主語を利用者さんに置き換える
主語を「私」や「利用者」にして書くのが適切です。例えば、「転倒させない(看護師目線)」ではなく、「私は転倒せずに歩行できるようになることを目指します(利用者目線)」とします。
具体的かつ測定可能な表現を用いる
達成できたかどうかを後から評価できるように、具体的な数値や基準を用いて設定します。曖昧な表現(「ある程度」「できるだけ」など)は避けるべきです。
目標設定の際は、利用者さんの希望と現時点での状態をバランスよく考慮し、達成可能な目標を立てることが重要です。
訪問看護計画書では、計画の進行状況を追跡し、必要に応じて修正を行うために「問題点・解決策」の記入が重要です。
「問題点・解決策」の欄には、利用者さんの現在の問題点や課題を具体的に記述し、それに対する看護・リハビリテーションの解決策を明示的に記入します。この解決策は目標とリンクし、計画が実行可能であるように立案されます。
一人の利用者さんに複数の看護診断があることはよくあります。複数の問題がある場合は、介入すべき・解決すべき優先順位を決定し、優先度の高い問題から集中して介入します。
優先順位を決めるポイントは主に以下の3つです。
1. 生命に影響を与える問題(生理的ニードに関する問題など)。
2. その時点で解決しなければ、多くの別の問題を引き起こしかねない状況にある問題。
3. その問題を解決すると、波及して多くのことが解決していく問題。
疾患や看護問題が同じ場合でも、利用者さん一人ひとりの生活背景や個性は異なるため、個別に合わせた看護計画作成を心がけましょう。
個別性のある計画を作成するためには、看護診断を検討する上で着目した「症状・徴候」「関連因子・危険因子」「なりゆき」の3つのポイントごとに介入方法を検討し、看護計画を立てることが役立ちます。
また、看護計画の書き方として重要なのは、誰でも同じように観察やケアが行えるように、できるだけ具体的に書くことです。抽象的な表現は避け、第三者が見ても理解しやすいように具体的に記入しましょう。
訪問看護計画書は、利用者さんやそのご家族に内容を伝える必要のある書類です。
そのため、専門用語や複雑な言葉の代わりに、一般の言葉を使用して簡潔かつ明確に表現するように心がけましょう。専門職だけが理解できる内容を含めると、計画書の効果的なコミュニケーションが妨げられる可能性があります。
訪問看護計画書は、医師の訪問看護指示書やケアマネージャーの作成するケアプランに沿って作成することが重要です。看護師ができる業務は診療の補助であるため、診療方針やケアプランが看護を行う上での基本となります。
ただし、観察計画の中で気になる点や数値があれば、すぐに医師やケアマネージャーに報告し、診療方針やケアプランの見直しにつなげることも大切です。
利用者さんの状態やニーズは変化する可能性が高いため、訪問看護計画書は一度作って終わりではなく、定期的に内容を見直し、修正を行う必要があります。
計画にはあらかじめ評価日を設け、目標の到達度や計画内容を検討することが望ましい進め方です。評価データは、問題点や目標の進捗状況を把握し、ケアプランを調整するために重要です。目標が達成できなかった場合は、原因を丁寧に分析し、計画の修正や再作成を繰り返す必要があります。

ここでは、一般的な看護問題である「転倒・転落リスク状態」と「食欲不振」の2つの例に基づき、O-P・T-P・E-Pの記入例を紹介します。
転倒・転落リスクは、特に高齢者や身体機能が低下している利用者さんにとって重大な看護問題です。適切な観察、援助、教育を通じてリスクを最小限に抑えることが求められます。
項目 | 記入例 |
看護問題 | 転倒・転落リスク状態 |
看護目標 | 長期目標: 転倒・転落することなく安全に過ごすことができる。短期目標: 転倒・転落予防の重要性を理解し、予防行動をとることができる。 |
O-P (観察計画) | ・バイタルサイン、睡眠状況、ADL、疼痛の有無、転倒歴。・歩行状況(ふらつきの有無)、履物を正しく履けているか。・ドレーンや点滴ルートの状態、ナースコールの使用状況。・服薬状況(睡眠薬や降圧剤の有無)、自宅環境(床の状態、照明、障害物)。 |
T-P (援助計画) | ・片側のベッド柵を使用し、ベッドを適切な高さに調整する。・移動補助具(歩行器、杖)を提供する。・夜間はセンサーマットを配置し、トイレ歩行介助を行う。・滑りやすい履物の使用を避ける。・消灯前にトイレ誘導を行う。 |
E-P (教育計画) | ・利用者さんとご家族に対して転倒・転落のリスクと予防法を説明する。・夜間時のトイレ歩行はナースコールを使用するよう声かけする。・ドレーンや点滴のルート類が絡まないように声かけする。・退院後の自宅環境整備についてご家族に指導を行う。 |
食欲不振は様々な要因で引き起こされる可能性がある看護問題です。栄養状態を適切に維持するためには、原因の特定と個別性を考慮したアプローチが必要となります。
項目 | 記入例 |
看護問題 | 食欲不振状態 |
看護目標 | 長期目標: 栄養状態が改善し、適切な食事摂取量を維持できる。短期目標: 食事に対する前向きな態度を持つことができる。 |
O-P (観察計画) | ・バイタルサイン、体重、血液検査データ。・食事摂取量(1日の摂取カロリー、水分摂取量)、日中活動量、排泄状況。・食欲の有無、吐き気の有無、味覚異常の有無、口腔内異常の有無、嚥下機能。・服薬状況、食事に対する意欲。 |
T-P (援助計画) | ・嘔気予防のため食事前に吐き気止めを提供する。・匂いの少ない食事など利用者さんに合わせた食事を管理栄養士と相談する。・日中の活動量を増やすため、運動やリハビリを実施する。・食前に口腔ケアを実施する。 |
E-P (教育計画) | ・栄養バランスの良い食事の重要性について説明する。・栄養補助食品を紹介する。・口腔ケアの実施を声かけする。・食欲増進のための工夫(適度な運動、リラックス法)を指導する。・ご家族に対して退院後の食事管理について指導する。 |
訪問看護計画書を作成し、サービスを提供していく中で気を付けなければならないことがいくつかあります。
正しい情報を記載する
計画書には正確で適切な情報を記載することが不可欠です。誤った情報は、誤診や誤った治療などのリスクを引き起こす可能性があります。
情報共有を徹底する
訪問看護計画書は多職種の専門家が連携し、利用者さんに最適なケアを提供するために必要です。利用者さんに関わる全てのスタッフで情報を共有し、協力して計画を立てることが重要です。
最低2年間は保存する
厚生労働省が定める「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」によれば、訪問看護計画書は最低2年間の保存が必要です。これは法的な要件に適合し、監査や検査に対応するためです。
衛生材料等の詳細を記載する
「衛生材料等が必要な処置の有無」が「有」の場合、処置の内容、必要な衛生材料の種類、サイズ、および1か月に使用する量などの詳細情報を記入します。


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O-P(観察計画)、T-P(援助計画)、E-P(教育計画)は、効果的な訪問看護計画を立案するうえで欠かせない要素です。
訪問看護計画とは、利用者さんが持つ問題を解決し、最終的に利用者さんがどうなりたいかという目標を示すものです。常に利用者さんの個別性に焦点を当て、利用者目線で具体的かつ実行可能な計画を立案し、質の高いケアを提供できるよう努めましょう。また、定期的に計画の評価と見直しを行い、常に最適なケアを提供できるよう努めることが重要です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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