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訪問看護ベースアップ評価料を徹底解説:賃上げの仕組み、算定要件、実務上のポイント【2024年度診療報酬改定対応】

訪問看護ベースアップ評価料を徹底解説:賃上げの仕組み、算定要件、実務上のポイント【2024年度診療報酬改定対応】

公開日時:2024.12.6

更新日時:2026.7.13

2024年度の診療報酬改定で新設された「訪問看護ベースアップ評価料」を算定することで、事業所の負担は最小限で、職員の給与を向上させることができます。

現時点では、令和2024・2025年度のみ算定できる評価料ですので、この機会に算定を行い、処遇改善を実施しましょう。

今回は、訪問看護ベースアップ評価料について、新設に至った背景や内容、算定要件や届け出時のポイントをご紹介します。

訪問看護ベースアップ評価料とは

訪問看護ベースアップ評価料は、2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で新設された評価項目です。この制度の目的は、訪問看護ステーションで働く職員の処遇を改善し、賃金の引き上げを支援することです。

制度の概要と目的

この評価料は、この評価料は、訪問看護職員の基本給または毎月支払う手当のベースアップ(引き上げ)を、令和6年度および令和7年度の限定的な特例対応と位置づけており、この期間内に賃金の上昇を目指すことを目標としています。

賃金改善の実績に応じて算定される仕組みとなっており、評価の基準や算定要件の違いから(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類が設けられています。

導入された背景

評価料が新設された背景には、医療業界における人材不足の深刻化があります。他産業に比べて賃金の上昇が追い付いていない現状を是正し、看護職員をはじめとする医療従事者の処遇を改善し、人材確保と定着を図ることが急務とされていました。

高齢化により訪問看護の需要が高まるなか、サービスの質の維持・向上と安定的な提供体制を確保するため、賃金支援策として本評価料が導入されました。算定方法については、利用者一人当たりの訪問日数に差がある実態を考慮し、月単位の訪問看護管理療養費に上乗せする形で設計されています。

ベースアップ加算(介護保険)との違い

名称が似ている制度として「ベースアップ加算(介護職員ベースアップ等支援加算)」がありますが、これは介護保険サービスを対象としていました。一方、訪問看護ベースアップ評価料は、医療保険サービスを提供する訪問看護ステーションを対象としています。

なお、介護保険側のベースアップ加算は、2024年度の介護報酬改定をもって廃止され、他の処遇改善加算制度に統合されています。

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)の詳細

ベースアップ評価料(Ⅰ)は、多くのステーションが算定しやすいように設定された、基本的な賃金改善の評価です。

算定料と算定対象

算定料は、利用者1人につき月1回、一律780円です。算定できるのは、訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)を算定している利用者に対してとなります。

対象職員と算定要件

対象職員

対象となるのは、管理者業務に専従する者を除いた、主として医療に従事する職員です。

具体的には、看護師、保健師、准看護師、看護補助者といった看護職に加え、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士、言語聴覚士なども含まれます。

ただし、専ら事務作業を行う事務職員は対象外となるため注意が必要です。一方で、看護補助者などが医療専門職の補助として行う事務作業は、この「事務作業」には含まれず、対象となり得ます。

主な算定要件

1. 賃金改善の義務: 2024年度および2025年度において、対象職員の賃金改善(定期昇給や役員報酬の増加分を除く)を実施すること。

2. ベースアップの原則: 賃金改善は、基本給または毎月支払われる手当の引き上げによって行うことを原則とします。

3. 賃金改善率の目標達成: 2024年度に基本給等を前年度比で2.5%以上、2025年度に2023年度比で4.5%以上引き上げた実績がある場合、事務職員など他の職員の賃金改善分も実績に含めることが可能です。

4. 計画書の作成と周知: 2024年度および2025年度の「賃金改善計画書」を作成し、その内容や就業規則等を職員に周知徹底することが求められます。また、職員から照会があった際には、書面を用いて分かりやすく説明する義務があります。

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)

評価料(Ⅱ)は、評価料(Ⅰ)を算定してもなお、賃金増率の目標達成が難しい小規模な訪問看護ステーションを支援するために、上乗せで算定できる仕組みです。

評価料(Ⅱ)の目的と算定区分

算定料は一律ではなく、ステーションの規模や賃金状況に応じて全18区分に分類されています。区分1の10円から区分18の500円まで幅があり、算定額は複雑な計算式(数【A】など)に基づいて決定されます。

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)1

10円

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)2

20円

(区分10までは10円ずつ上昇)

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)10

100円

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)11

150円

(区分18まで50円ずつ上昇)

訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)18

500円

算定要件と計算の基準

評価料(Ⅱ)を算定するには、(Ⅰ)の要件を満たすことに加えて、以下の施設基準を満たす必要があります。

1. (Ⅰ)の届出: 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っていること。

2. 賃金増率の不足: 評価料(Ⅰ)による算定見込み額が、「対象職員の給与総額」に「医療保険の利用者割合」を乗じた額の1.2%未満であること。

3. 常勤換算人数: 対象職員が常勤換算で2人以上勤務していること(ただし、医療資源が少ない特定地域を除く)。

4. 収入割合: 社会保険診療等(保険診療等)に係る収入金額が、総収入の80%を超えること。

区分決定の更新

評価料(Ⅱ)の区分は、給与総額や算定回数の見込みを用いて算出した数【A】に基づき届け出られます。

この区分は、毎年3月、6月、9月、12月に新たに算出し、変更が生じた場合は算出月内に地方厚生局に届け出た上で、翌月(4月、7月、10月、翌1月)から変更後の金額を算定します。ただし、前回届出時と比較して、給与総額や計算結果【A】などの変動が1割以内であれば、区分の変更は不要とされています。

算定を行う月

算出の際に用いる「対象職員の給与総額」の対象となる期間

算出の際に用いる「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される金額の見込み」、「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込み」の対象となる期間

算出した【A】に基づき届け出た区分に従って算定を開始する月

3月

前年3月~2月

前年12月~2月

4月

6月

前年6月~5月

3~5月

7月

9月

前年9月~8月

6~8月

10月

12月

前年12月~11月

9~11月

翌1月

届出・申請手続きと留意点

届出に必要な書類と提出時期

ベースアップ評価料の届出は、訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局に対して行います。提出は、極力、専用のメールアドレスにExcelファイルを送付する方法が推奨されています。

書類名

提出時期

概要

賃金改善計画書

新規届出時および毎年6月(作成は毎年4月)

賃金改善の方法や内容について具体的に記載します。

賃金改善実績報告書

毎年8月

前年度の賃金改善の実施状況を評価し報告します。

特別事情届出書

事業継続のために評価料による改善分を除く賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う場合

賃金水準引き下げの内容などを記載します。

なお、評価料(Ⅰ)のみを届け出る場合は、手続きを簡素化した「評価料Ⅰ専用届出様式」を使用することができます。

算定・賃金改善に関する重要な留意事項

1. 賃金改善の使途
評価料による収入は、原則としてベースアップおよび、それに伴い増加する賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分を含む)の増加分に充当しなければなりません。

2. 計算支援ツールの利用
評価料(Ⅱ)の算定基準や必要昇給額の計算は複雑です。厚生労働省から「訪問看護ベースアップ評価料計算支援ツール」が公開されているため、これを活用して正確に試算することが推奨されます。

3. 裁量と透明性
具体的な賃上げの対象職種や金額は、各訪問看護ステーションの判断に委ねられています。職種間で賃上げ額に差を設けることも可能ですが、職員のやりがいや定着に繋がるよう、公平性と透明性をもって決定することが望ましいです。

4. 利用者への十分な説明
評価料は、訪問看護の利用料金に上乗せされる形で患者負担が生じる可能性があります。評価料の趣旨(職員の処遇改善によるサービス質の向上)を、患者やその家族に丁寧に説明し、理解を得る体制を整えることが重要です。

5. 書類の保管
算定の根拠となる「賃金改善計画書」などの関連書類は、算定した年度が終了した後も3年間の保管が義務付けられています。

厚生労働省「訪問看護ベースアップ評価料計算支援ツール」

ベースアップ評価料に関するQ&A

Q.
ベースアップ評価料の施設基準において、「対象職員のベア等及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いること。」とありますが、時給制で労働する対象職員について、時給の引き上げによって賃上げを実施しても良いですか。

A.
差し支えありません。また、この場合、労働時間が短縮したことにより月の給与総額が減少していても、差し支えありません。ただし、届出等に係る「対象職員の給与総額」の記入においては、実際に対象職員に対し支払った給与総額を用いなければなりません。

出典:疑義解釈資料の送付について(その2)

Q.
ベースアップ評価料において、賃金の改善は、算定開始月から実施する必要がありますか。

A.
原則算定開始月から賃金改善を実施し、算定する月においては実施する必要があります。令和6年4月より賃金の改善を行った保険医療機関又は訪問看護ステーションについては、令和6年4月以降の賃金の改善分についても、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めて良いです。ただし、届出時点において「賃金改善計画書」の作成を行っているものの、条例の改正が必要であること等やむを得ない理由により算定開始月からの賃金改善が実施困難な場合は、同年度末までに算定開始月まで遡及して賃金改善を実施する場合に限り、算定開始月から賃金改善を実施したものとみなすことができます。

出典:疑義解釈資料の送付について(その1)

Q.
ベースアップ評価料について、区分変更を行う場合はどのような届出が必要ですか。

A.
訪問看護ステーションについては、「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の施設基準に係る届出書添付書類」が必要です。いずれの場合についても「賃金改善計画書」を更新する必要はありません。

出典:疑義解釈資料の送付について(その1)

Q.
「ベースアップ評価料」を算定する訪問看護ステーションに勤務する職員が、介護報酬における「介護職員等処遇改善加算」又は障害福祉サービス等報酬における「福祉・介護職員等処遇改善加算」を算定する介護サービス事業所等の従事者を兼務している場合であって、当該加算を原資とする賃金改善の対象となっている場合について、ベースアップ評価料における対象職員及び給与総額はどのように考えれば良いですか。

A.
当該医療機関又は訪問看護ステーションにおける業務実態として、主として医療に従事しているものについて、対象職員として含めて差し支えありません。ただし、対象職員ごとの給与総額について、業務実態に応じて常勤換算方法等により按分して計算することを想定しています。

出典:疑義解釈資料の送付について(その4)

ベースアップ評価料+「ZEST」で、賃上げも働きやすさも叶える好循環へ

本コラムで解説した通り、ベースアップ評価料は職員の処遇改善に欠かせない制度です。しかし、真に職員が定着し、選ばれるステーションになるためには、一時的な賃上げだけでなく、「高まった人件費を支え続ける収益力」と「疲弊しない働きやすい環境」の両立が不可欠です。

そこで役立つのが、訪問看護経営をサポートする『ZEST』です。

『ZEST SCHEDULE』で稼働率向上と原資の確保

ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定額を増やすには、訪問件数(利用者数)の確保が重要です。

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『ZEST HUB』を活用すれば、スタッフはスマホで訪問予定や利用者情報をいつでも確認でき、記録や申し送りもスムーズに。直行直帰や隙間時間の有効活用を促進し、「給与への満足」に加えて「働き方への満足」を高めることで、離職を防ぎます。

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まとめ

訪問看護ベースアップ評価料は、2024年度および2025年度の限定的な措置ではありますが、職員の賃金改善を強力に推進する制度です。

この評価料を適切に算定し、確実に基本給等のベースアップに繋げることで、職員のモチベーションが向上し、結果として人材の確保・定着、そして訪問看護サービスの質の安定的な向上に寄与することが期待されます。特に、複雑な算定要件を持つ評価料(Ⅱ)については、厚生労働省の支援ツールを活用し、制度を最大限に活かすことが、ステーションの安定した経営を実現するための鍵となります。

ZESTでは、毎日無料オンライン説明会を行っておりますので、ご興味がございましたら是非お申込みください。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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