
2025年問題やさらに先の2040年を見据えると、高まる医療・介護ニーズに対応するための看護職員の人材確保と継続的な活躍は、社会にとって重要な課題となっています。1990年代から対策が進められ、看護職員の就業者数は大幅に増加しましたが、依然として人手不足が慢性化しており、特に夜勤業務に従事できる人材の不足が深刻です。
このような状況の中、時代の変化や個人の価値観の多様化に伴い、看護師業界においても働き方改革が進められています。日本看護協会は、看護師が仕事と生活を両立させ、長く働き続けられる環境を目指し、「看護における働き方改革」を推進しており、看護師が個々の事情に応じて多様な働き方を選択できることを目標に掲げています。

看護師の主な就業場所は病院ですが、その割合には変化が見られます。2018年末時点で看護師の73.9%は病院に勤務していますが、2020年のデータでは58.3%と減少傾向にあります。
一方、訪問看護ステーションや介護保険施設といった地域社会を支える場での就業割合は増加傾向にあり、看護師が活躍できる場の選択肢が年々広がっています。
出典:厚生労働省(看護師等(看護職員)の確保を巡る状況に関する 参考資料)

総合病院や入院設備のある診療所など、多くの看護師が働く現場では、24時間体制で患者ケアを行うため、夜勤や休日出勤を含む交代制勤務が基本です。
交代制勤務の形態には主に2種類あります。
日勤(朝から夕方まで)と夜勤(夕方から朝まで)の2シフトで構成されます。一回の勤務時間は長いものの、その分休日を確保しやすいという特徴があります。
病院・外来看護の64.5%がこの形態を採用しています。
出典:日本看護協会(2021 年 病院看護・外来看護実態調査 報告書)
日勤、準夜勤、夜勤の3シフトで構成されます。2交替制に比べて1勤務の時間は短いですが、日勤後すぐに夜勤に入るなど、勤務や休日のリズムが不規則になりやすい傾向があります。
特に日本では諸外国では一般的ではない16時間勤務が存在しますが、これらは看護職員の健康と生活に深刻な影響を及ぼします。具体的には、心血管系、消化器系、代謝異常、心理的障害、さらにはがんや生殖器系への影響が指摘されています。
さらに、疲労が蓄積した状態での業務は、患者の安全にも直接関わってきます。例えば、看護職員による医療ミスの発生確率は、8.5時間シフトと比較して12時間シフトで3倍になったという報告があり、勤務時間が12.5時間以上になるとリスクが約2倍になるというデータも示されています。また、看護職員の労働時間が長い病院ほど、患者の満足度が低下する傾向も報告されています。
こうした長時間労働は、看護職員自身の健康だけでなく、医療の質と患者の安全に直結する深刻なリスクを伴います。
しかし、慢性的な人手不足や24時間体制の医療提供という構造的な課題から、根本的な勤務形態の改善は容易ではありません。だからこそ、医療現場全体で、この労働環境がもたらすリスクを真摯に受け止め、柔軟な勤務シフトの導入や業務負担の軽減など、継続的な働き方の見直しと改善が強く求められています。
看護師の働き方は、その就業場所、雇用形態、そして勤務形態によって大きく異なります。自身のライフプランや看護観に合わせて最適な職場を選ぶためには、多様な選択肢それぞれの特性を深く理解しておくことが重要です。
看護師の約7割が病院に勤務していますが、訪問看護ステーションや介護保険施設といった地域医療・福祉の現場での就業割合は増加傾向にあります。働く場所ごとの特徴と、そこで求められる役割について解説します。
病院は20床以上の病床を有する医療機関を指し、国立や公立、医療法人など運営母体や規模によって機能が異なります。
勤務形態
24時間365日体制で稼働しており、基本的には曜日や時間帯に関係なく交代制で勤務します。ただし、外来や手術室(オペ室)など、配属先によっては日勤が中心となる場合もあります。
大学病院の特徴
最先端の医療や高度な医療技術が提供される教育・研究機関として位置づけられています。診療科目が細分化されており、看護師は専門的な知識を習得するための研修や勉強会などの教育サポートを充実して受けられる環境があります。
一方で、重症度の高い患者が多く、救急対応も含むため、仕事のストレスや負荷は看護師の仕事の中でも最も多いと言われています。大学病院では、研修医が多いことから、看護師が行う採血や注射などの医療行為は、一般病院に比べて限定される傾向にあります。
一般病院の特徴
大学病院と比べて看護師が担える医療行為が多く、現場で多様な経験を積むことができます。大規模な病院では病棟看護師と外来看護師で仕事が明確に分かれますが、小規模な病院では外来と病棟の両方を担当するケースもあり、スペシャリストよりもゼネラリストとしての役割が求められます。
一般病院は大学病院ほどの激務ではないものの、配属される診療科や病棟、外来の忙しさによって、業務負荷には差があります。
クリニックは病床数が19床以下、あるいは無床の医療機関を指し、多くは外来診療が中心です。
勤務形態
基本的に診療時間に合わせて勤務するため、日勤のみで、日曜日や祝日は休みというケースが多く、生活リズムが整えやすいのが大きなメリットです。
業務の特徴
通常の看護業務(診察補助、注射、採血、投薬など)に加えて、診察の準備や片付け、事務作業などの仕事も担うため、病院よりも仕事の範囲が広くなります。少ないスタッフで運営されるため、看護師には即戦力としての活躍が求められます。
給与水準
夜勤手当がないため、給与水準は病院勤務より低くなる傾向があります。
特有の業務
美容外科クリニックなどでは、美容関連商品の販売業務を担うこともあります。

在宅医療推進の動きに伴い、訪問看護ステーションの施設数は年々増加しており、注目を集めています。
勤務形態
基本的には日中の勤務が中心です。ただし、24時間対応を提供している事業所では、夜間や休日にオンコール勤務が発生します。
業務の特徴
看護師は主治医の指示に基づき、利用者宅を訪問して看護サービスを提供します。終末期看護、がん看護、精神科看護など、幅広い対象と多岐にわたるケアを提供しています。具体的な業務には、医療処置(注射、点滴、測定、記録など)、状態観察、適切なアドバイス、さらには食事や排泄の介助、機能回復訓練などが含まれます。
求められる役割
基本的に看護師は一人で訪問するため、高度なアセスメント能力と自律性が求められます。また、医師、介護士、薬剤師など、多職種との密接な連携、そして利用者やその家族へのメンタルサポートも不可欠です。
老人福祉施設、児童福祉施設、障がい者支援施設など、乳児から高齢者までの生活を支援する施設が該当します。
勤務形態
残業や夜勤がない施設が多く、ワークライフバランスを取りやすい職場が多いです。入所型、デイサービス型、グループホーム型など多様な形態があります。
業務の特徴
主な仕事は利用者の生活支援であり、医療行為は病院に比べて限られます。介護保険施設では高齢利用者の健康管理や投薬管理が中心となり、介護職員や医師との連携が求められます。障害者支援施設では、介護の側面がより強くなります。
キャリアの側面
医療行為が少ないため、看護師としてのスキルアップはあまり望めないという側面があります。一方で、人とコミュニケーションを取ることが好きで体力に自信がある人には向いている職場といえます。
責任
日常業務の負担は少ないものの、常駐の医師がいない場合や緊急時の対応時には、看護師に求められる責任は大きくなります。
病院や施設での直接的な看護ケア以外にも、看護師の専門知識を活かせる場は多岐にわたります。
行政・学校
役所の福祉・保健課、保健所、幼稚園、保育園などで活躍します。仕事内容は予防看護が中心で、健康相談、生活指導、健康診断、予防接種の実施などを行います。勤務時間帯は基本的に平日の日中であることが多いです。保健所・保健センターは地方公務員としての勤務となり、安定した条件で働けますが、保健師が働くことが多いため、看護師の採用枠は狭き門となる傾向があります。
企業
一般企業では、従業員の健康管理を担う産業看護師や、製薬会社の治験コーディネーター(CRC)として活躍できます。また、イベントやツアーナース、医療系記事のライターなど、契約や形態も多様です。平日の日中勤務が多いですが、求人数が少ないため、採用倍率は高い傾向にあります。
看護大学や看護専門学校で、将来の看護師を目指す学生を指導する教員職という選択肢もあります。
業務の特徴
実習指導教員としてサポート業務を行ったり、専任教員として講義や実習の指導を行います。仕事内容は臨床とは異なりますが、「教育者」としてのやりがいが得られます。
条件
看護師免許があるだけでなく、学位や経験などの条件が求められます。専任教員になると、講義や演習の準備、試験・成績に関する業務などで時間外労働が増える傾向があります。
働き方の多様化に伴い、雇用形態や勤務形態も細分化されており、個々のライフスタイルに合わせた選択が可能です。
正社員(常勤)
看護師として働く人の8割以上がこの形態です。フルタイム勤務が基本で、労働期間の定めがなく、ボーナスや昇給があり収入が安定し、充実した教育制度を受けやすいというメリットがあります。勤務時間や休日、給与、福利厚生は就業規則により定められています。
パート・アルバイト
非正規雇用で、労働時間や休日の調整がしやすく、柔軟性が高い働き方です。時給制の場合が多く、病院によってはボーナスがない場合もあります。短時間勤務や出勤日数の調整が可能ですが、給与水準や福利厚生、教育支援は正社員よりも低くなる傾向があります。大阪府済生会吹田病院の「くわいナース制度」のように、1日2時間から勤務可能など、超短時間勤務を可能にする柔軟な制度も生まれています。
派遣
人材派遣会社と契約し、派遣先の施設で勤務します。給与や手当は派遣会社から支給されます。産休代替要員や一時的な人員補填として、数ヶ月間の勤務や単発勤務になるケースがあります。自由度が高い反面、正社員と同等の待遇は望めず、契約打ち切りのリスクもあり不安定さがあります。
業務委託
個人事業主として依頼主と個人契約を結ぶ働き方で、ツアーナースや健診看護師、ライターなどがあります。働く時間や報酬の自由度が高いですが、業務委託で働ける看護師の仕事は多くなく、見つけるのが難しい場合もあります。
多様な看護師のニーズに応えるため、医療機関では柔軟な働き方を実現するための具体的な制度が導入されています。
川崎幸病院では、子育て中の看護師が「フルタイム」で働けないことを理由に離職する状況を改善するため、2008年に短時間正職員制度を導入しました。さらに2011年には、ライフイベントに応じて雇用形態を柔軟に変更できるステップアップ・ステップダウンシステムを導入。非常勤から正職員へのステップアップはもちろん、その逆の変更も可能です。正職員の中にも日勤専従や夜勤専従、時差出勤といった多様な勤務シフトが設定され、個別の働き方の希望に対応しています。
大阪府済生会吹田病院では、潜在看護師の復帰を支援するため、2009年にくわいナース制度を導入しました。この制度は、勤務日や勤務時間の融通が非常に利き、1日2時間以上から勤務が可能という超短時間勤務の仕組みです。この柔軟性により、「子どもの急な病気で休むのが心苦しい」「ブランクへの不安がある」といった潜在看護師が持つ働くことへの障壁を取り除きました。また、現場の不公平感を避けるため、くわいナースは特定の病棟に所属させず看護部長室所属とし、病棟スタッフの「プラスαの存在」として位置づけています。
八千代病院は、「誰もが働きやすく公平な職場」を目指し、特に子育て世代とその他のスタッフ間の不公平感の軽減に取り組みました。2017年から就業規則を見直し、正規職員の必須要件として夜勤や12時間長日勤を明確化しつつ、一定の条件で軽減・免除を認めました。また、16時間夜勤を廃止し、拘束時間の短い12時間夜勤に統一しました。さらに、給与体系の見直しを行い、夜勤や長時間勤務を多く行った場合には割増手当を加算するインセンティブを設けることで、公平性を担保しました。育児短時間勤務制度についても、従来の6時間勤務に加え、7時間勤務や週休3日制度といったパターンを設け、選択肢を増やしています。
大野浦病院では、「目いっぱい働いて収入を増やしたい」という職員のニーズに応えるため、「ワーク重視型制度」を導入しました。これは、標準よりも多く働く職員に対し、規定の勤務日数を達成した場合に一時金(インセンティブ)を支給する制度です。また、法人内・法人外での副業を規定し推進しており、収入増加を求める職員を支援しています。副業を行う際のルールとして、勤務間インターバル(9時間以上)の確保など、職員の健康管理を前提とした規定を設けています。

多様な働き方が存在する中で、自分にとって最適な道を選ぶには、自身の価値観に基づいた優先順位を見極めることが不可欠です。
自分が患者にどのような看護を提供したいか、どのように関わりたいかという「看護観」を明確にしましょう。
看護師としてのキャリアだけでなく、1日、3年後、10年後といった時間軸で、自分がどのような生活を送りたいかを具体的にイメージすることが重要です。
給与、教育体制、ワークライフバランスなど、自分にとって最も価値があるものは何かを整理し、優先順位をつけましょう。これに正解はありません。
多様な勤務形態や就業場所の特徴を理解した上で、自身の理想に近い職場や勤務形態を探します。説明会や就業体験に参加することは、職場のリアルな情報を得る上で役立ちます。

高まる医療・介護ニーズに対応し看護職員が長く活躍し続けるためには、働き方の多様化とワークライフバランスの実現が不可欠です。特に訪問看護の現場は、役割が増大する一方で、慢性的な人手不足や長時間労働による負担が課題となっています。訪問スケジュールから収益を最大化する『ZEST』は、これらの課題解決と、看護師が個々の事情に応じて柔軟に働ける環境づくりに貢献します。
『ZEST』の核となる機能の一つが、スケジュール自動作成システム「ZEST SCHEDULE」です。利用者の希望時間、職員の勤務シフト、担当者の固定・チーム制など、訪問看護特有の複雑な条件を考慮し、人が考え抜いたような最適解のスケジュールを最短1秒で提案することで、管理者のスケジュール作成にかかる時間的・精神的な負担が大幅に軽減されます。
さらに、Googleマップと連携した効率的な移動ルートの自動計算によって無駄な移動を減らし、1日の訪問可能件数を増やしつつ、スタッフの移動による疲労と負担を軽減します。これらの機能は、長時間労働が医療の質や患者の安全に直結するというコラムの指摘に対し、根本的な業務効率化による勤務形態の改善という形で応えるものです。
スタッフの生産性を高め、働く満足度向上に貢献するのが『ZEST HUB』です。スマートフォンから、訪問予定だけでなく、移動時間や訪問以外の予定、空き時間を一目で確認できるため、スタッフは空き時間を活用して記録や申し送りなどの業務を計画的に行えるようになり、生産性の高い働き方を実現します。また、アプリ上で利用者情報や申し送りのメモを確認し、関連ツールへの遷移もスムーズにできるため、記録による残業を減らし、ワークライフバランスの改善に貢献します。
スケジュールデータやその他の蓄積されたデータから経営指標を見える化する『ZEST BOARD』は、訪問件数、移動時間、アイドリングタイムなど、経営に必要なデータを自動で集計・グラフ化します。特に、スタッフ別の訪問件数、訪問時間、移動時間に加え、弊社独自のアルゴリズムで算出するスタッフの負荷指数も算出できるため、数値をもとにした正しい評価が可能となります。これにより、スタッフの働く満足度や公平性が高まり、人材の採用・定着といった訪問看護ステーションの構造的な課題解決を支援します。
これら『ZEST』の機能は、業務効率化、働き方改革の推進、そしてデータに基づく環境整備というサイクルを生み出し、人手不足の中でも看護師が安心して、かつ継続的に活躍できる環境づくりに貢献します。
看護師は、病院や施設、企業など、様々な場所で多種多様な働き方を選択できる国家資格です。近年、働き方の多様化はさらに進んでおり、自身のライフサイクルや価値観に合わせたキャリアを構築することが可能です。多様な選択肢を理解し、自身の優先順位を明確に整理することで、納得できる理想の働き方の実現へと繋がるでしょう。
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